アフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は天水稲作で輸入肥料を代替できる
背景・ねらい
ブルキナファソを含む熱帯半乾燥地ではリン供給能が低い土壌が広がり、天水稲作において収量を制限している。しかし、現在流通している輸入リン肥料は農家にとって高価であり、施肥量は低く停滞している。アフリカには多くのリン鉱床が分布しているが、不純物を多く含み溶解度が低いものは低品位リン鉱石に分類され、未利用のままである。この未利用資源を活用し、国産リン肥料を製造できれば、肥料価格を低減することが期待される。国際農研では、アフリカ産低品位リン鉱石に対して、硫酸と反応させる部分酸性化法と、アルカリ塩とともに900℃以上の高温で焼成する焼成法を適用することで溶解性を高めることに成功している(令和元年度国際農林水産業研究成果情報A06「アフリカ産低品位リン鉱石は炭酸カリウム添加焼成により肥料化できる」)。既存の輸入リン肥料である過リン酸石灰 (SSP)が水溶性リンを主体とするのに対して、部分酸性化リン肥料は水溶性リンと可溶性リンを、焼成リン肥料は可溶性リンとク溶性リンをそれぞれ主体とする(表1)。ブルキナファソにおいて、現在の天水稲作の中心である河床、および地下水位は河床に比べ低いものの今後天水稲作が展開可能な河岸斜面を対象として圃場試験を行い(図1 上段)、低品位リン鉱石を用いて製造した部分酸性化リン肥料と焼成リン肥料がSSPの代替となり得るか検証するとともに、場所ごとに収量に寄与するリン成分を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 河床、河岸斜面の全ての地点で収量はリン肥料の施用によって大幅に増加する(図1 中段)。
- 現在天水稲作の中心である河床では、焼成リン肥料も部分酸性化リン肥料も輸入リン肥料であるSSPと同等の施肥効果を示し、両者は輸入リン肥料を代替できる(図1下段)。
- 河岸斜面の下部および中部では、部分酸性化リン肥料はSSPと同等の施肥効果を示すが、焼成リン肥料の施肥効果はSSPの約55~75%である(図1下段)。
- 地下水位が高い河床では水溶性リンと可溶性リンの両者が収量に寄与し、地下水位の低い河岸斜面では主に水溶性リンが収量に寄与したことから、上記の施肥効果の違いは肥料中のリン成分の違いによって説明できる(表2)。
成果の活用面・留意点
- アフリカに分布する低品位リン鉱石を用いた焼成リン肥料および部分酸性化リン肥料は、熱帯半乾燥地の天水稲作において広く利用できる可能性がある。
- 熱帯半乾燥地の天水稲作において有効なリン成分が明らかになり、肥料製造の指標となる。
- 地下水位が低い場所では河床であっても十分な施肥効果が得られない可能性があることから、技術の普及に当たっては多地点での検証が必要である。
具体的データ
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図1 試験概要およびアフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料の施肥効果
リン肥料を施用しない区を対照として、過リン酸石灰および低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料を施用し、施肥効果を比較する。平均地下水位:生育期間中の地下水位の平均値、エラーバー:標準誤差。 -
表1 肥料中の主要なリン成分
可溶性リン:中性クエン酸アンモニウム溶液に溶けるリン
ク溶性リン:2%クエン酸溶液に溶けるリン
◎:50%以上、〇:25-50%、×:25%未満 -
表2 収量に有意に寄与するリン成分
収量を目的変数、リン成分の投入量を説明変数とする重回帰分析で有意に収量に寄与するリン成分を求める。
◎: 1%水準で寄与、○: 5%水準で寄与、△:10%水準で寄与。図表はIwasaki et al. (2021) より改変(転載・改変許諾済)
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- 予算区分
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受託 » JST/JICA SATREPS
- 研究期間
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2019~2021年度
- 研究担当者
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岩崎 真也 ( 農村開発領域 )
伊ヶ崎 健大 ( 生産環境・畜産領域 )
科研費研究者番号: 70582021中村 智史 ( 生産環境・畜産領域 )
科研費研究者番号: 00749921南雲 不二男 ( 生産環境・畜産領域 )
科研費研究者番号: 20399372福田 モンラウィー ( 農研機構 中央農業研究センター )
Ouattara Korodjouma ( ブルキナファソ環境農業研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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Iwasaki et al. (2021) Soil Science and Plant Nutirition, 67: 460–470https://doi.org/10.1080/00380768.2021.1932584
- 日本語PDF
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2021_A10_ja.pdf432.02 KB
- English PDF
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2021_A10_en.pdf355.36 KB
- ポスターPDF
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2021_A10_poster.pdf309.77 KB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。