イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法

関連プロジェクト
SATREPSマダガスカル
要約
リン欠乏土壌ではイネの出穂が遅延するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では低温不稔が助長される。低温不稔のリスクが高い圃場にリンを施用することで、リン欠乏と低温不稔の双方の改善につながり、増収効果を高めることができる。

背景・ねらい

リンの施肥効率改善は、施用量が不足する地域での作物の生産性向上や枯渇するリン鉱石の持続的利用を実現する上で重要な課題である。熱帯地域に広く分布するリン欠乏土壌では、イネをはじめとする一年生作物の発育(出穂・開花)が遅延し、収穫までの日数が延びることが知られる。しかし、リン欠乏にともなう発育の変化が圃場での作物収量に及ぼす影響については定量的な評価がなされていない。本研究では、マダガスカル中央高地のリン欠乏水田において、リン施用の有無がイネの発育および収量に及ぼす影響を明らかにすることで、リン肥料を効率的にイネの増収に結びつけるための知見を得る。

成果の内容・特徴

  1. マダガスカル中央高地のリン欠乏水田でイネ(マダガスカルの主力品種であるX265)を栽培すると、移植日に関わらず、リン施用区の到穂日数(移植から出穂までにかかる日数)がリン非施用区に比べて9~16日間短くなる(表1)。
  2. リン施用による増収量は、同じ圃場でも移植日により有意に異なり、早植区が0.8 t ha-1、遅植区が1.2~1.3 t ha-1となる(表1)。
  3. 遅植区では、リン非施用区における出穂日前後の日平均気温が22°C(籾の稔実に影響を及ぼさない下限温度)を大きく下回る日が観測される(図1)。
  4. 遅植区では、リン非施用区の低温指数および不稔率が増加する(図2)。リンを施用して出穂を早めることで、低温不稔が改善される。早植区では、リン施用の有無による出穂日の変化が低温指数と不稔率に及ぼす影響は小さい。

成果の活用面・留意点

  1. マダガスカルや東アフリカの熱帯高地では、リン欠乏と低温ストレスが問題となる栽培環境が多いことから、生育後半に気温が低下する場合に優先的にリンを施用するなど、イネの出穂を早めるリンの働きを活用することで、リンの施肥効率を高めることができる。
  2. リン欠乏による発育の遅延は多くの一年生作物で観測されており、本成果で得られた知見は、イネ以外の作物への応用が期待できる。
  3. リン欠乏によるイネの出穂遅延の程度は、品種によって異なることが観測されている。

具体的データ

  1. 表1 リン施用の有無と移植日の違いがリン欠乏水田でのイネの到穂日数および収量に及ぼす影響

    • リン非施用区は、無施肥区および窒素のみを尿素で80 kg N ha-1施用した区の平均値。リン施用区は、リンのみを重過リン酸石灰で50 kg P2O5 ha-1施用した区および窒素とリンの双方を施用した区の平均値。
    • 早植区は11月28~29日、遅植区は12月27~30日に移植。
    • 下線付きの数値は、リン非施用区と施用区の平均値が5%水準で有意に異なることを示す。
    • 分散分析の結果、収量に対する移植日とリン施用の相互作用は5%水準で有意。
       
  2. 図1 イネの出穂日前後の日平均気温の推移

     

  3. 図2リン施用の有無と移植日の違いがイネの低温指数と不稔率に及ぼす影響
    低温指数は、出穂15日前から出穂7日後の期間に、日平均気温が低温限界温度22度を下回った数値の積算値。

     

    図表はAndrianary et al. (2021)より改変(転載・改変許諾済)

     

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

食料

予算区分

受託 » JST/JICA SATREPS

研究期間

2017~2022年度

ほか
発表論文等

Andrianary et al. (2021) Field Crops Research 271: 108256
https://doi.org/10.1016/j.fcr.2021.108256

Rakotoson, T. et al. (2022) Field Crops Research 275: 108370
https://doi.org/10.1016/j.fcr.2021.108370

日本語PDF

2021_B11_ja.pdf376.82 KB

English PDF

2021_B11_en.pdf316.79 KB

ポスターPDF

2021_B11_poster.pdf225.66 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。