マダガスカル
関連するJIRCASの動き
マダガスカルの貧困削減、栄養改善、持続的農業の推進に貢献~国際農研の提案課題がSATREPSに条件付き採択~
科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が共同で実施しているSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)の令和6年度新規採択研究課題(生物資源分野)として、国際農研の提案課題が条件付きにて採択されました。
生産環境・畜産領域の辻本泰弘プロジェクトリーダーらの論文が日本作物学会論文賞を受賞
生産環境・畜産領域の辻本泰弘プロジェクトリーダーらの論文「AZ-97 (Oryza sativa ssp. Indica) exhibits superior biomass production by maintaining the tiller numbers, leaf width, and leaf elongation rate under phosphorus deficiency」が、日本作物学会論文賞を受賞しました。
関連する現地の動き
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841. 食卓のアレを使って土壌分析!?
土壌にはリン酸と結合する性質(リン吸着能)があります。畑の土壌のリン吸着能が強いと、せっかく撒いたリン肥料が、作物に吸収される前に土壌と結合してしまうため、施肥効率が悪くなります。そのため、リン吸着能は施肥基準としても利用されます。最近の研究によって、リン吸着能が土壌水分含量と密接に関係していることがわかりました。国際農研とマダガスカル アンタナナリボ大学の研究チームは、この関係を利用して、食塩(塩化ナトリウム)を使ったある工夫を加えることで、土壌水分含量からリン吸着能を精度よく、しかも簡単に推定する手法を開発しました。 -
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563. 低土壌肥沃度耐性に関連するイネの遺伝子領域を発見
マダガスカルの主食はコメであり、一人当たりのコメ消費量は世界でトップクラスですが、さらに増加しています。しかしこの国では、イネは主に小規模農家によって肥沃度の低い土壌で栽培され、化学肥料は殆ど投入されていません。その結果、コメの収量は伸び悩み、国レベルでコメの生産量と消費量のギャップが拡大しています。そこで、国際農研では国際稲研究所(IRRI)のジーンバンクから導入した遺伝資源を評価し、現地の栽培条件下でコメの収量向上に利用できる低肥沃度耐性に関連するドナー(遺伝子提供系統)と遺伝子領域を同定しました。
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556.ゲノム予測モデルが明らかにする穀粒中の亜鉛濃度が高い品種の開発に利用できるイネ遺伝資源
マダガスカルなどでは、主食であるコメに含まれる亜鉛(Zn)濃度は1日の必要量を十分に供給するには低すぎるため、コメを主食とする家庭で、ミネラルが豊富な果物や野菜、肉などを加えて食事を多様化する余裕がない場合には、食事からのZn摂取量が不足し、Zn欠乏症になる危険性があります。その解決には主食であるコメに含まれるZnを増やすというアプローチがあります。このような食用作物の可食部におけるZn濃度を高めるアプローチ(Zn-バイオフォーティフィケーション)は、亜鉛欠乏を緩和するための世界的な育種目標です。国際農研は他機関と共同でゲノム予測モデルにより3000点のイネ遺伝資源のコメZn濃度を予測し、その中のZn濃度が高いドナー(遺伝子提供系統)候補をマダガスカルで、実験的に検証しました。
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533. 農業生産多様性が子どもの栄養状態に及ぼす影響
栄養不良は、子どもたちに生涯にわたって続く大きな影響をもたらします。今回は、マダガスカルの農村を対象として、各農家の農業生産の多様性、食の多様性、そして子供の栄養状態への影響をみた論文を紹介します。 -
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108. 世界野菜センター: マダガスカルの伝統野菜に勢いをつける
世界野菜センター(World Vegetable Center;World Veg) のRitha Luoga と Sognigbe N’Danikouは、World Veg のホームページに「マダガスカルにおける伝統野菜の利用」についての記事を公表しました。著書らは、マダガスカルにおける野菜遺伝資源の保全、食料と栄養の安全保障、農家の収入向上における伝統野菜の重要性について、報告しました。
刊行物
広報JIRCAS (14)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 広報JIRCAS. 14 ( )
jircas14-_-.pdf7.66 MB
広報JIRCAS (13)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 広報JIRCAS. 13 ( )
jircas13-_-.pdf6.58 MB
広報JIRCAS (9)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 広報JIRCAS. 9 ( )
jircas9-_-.pdf2.93 MB
JIRCASニュース(90)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, JIRCASニュース. 90 ( )
jircas_news-90_-.pdf2.19 MB
JIRCAS Newsletter(90)
Japan International Research Center for Agricultural Sciences, JIRCAS Newsletter. 90 ( )
jircas_newsletter-90_-.pdf1.76 MB
関連するイベント・シンポジウム
出張報告書
報告書番号 | 出張年月 | 国名 | 出張目的 | 関連プログラム |
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R06-0303 | 2024年10月 - 2024年11月 | マダガスカル | アンカラファンツィカ国立公園内の土壌侵食プロットの撤収および水田群における灌漑水質と土壌肥沃度調査 | 食料 |
R06-0294 | 2024年10月 - 2024年11月 | マダガスカル | SATREPS「ゼロハンガーとゼロエミッションに同時貢献する水田を中心とした食料生産システムの創出」プロジェクトの詳細策定調査 | 食料 |
R06-0004 | 2024年04月 - 2024年05月 | マダガスカル, ガーナ | 1. イネ収穫、試料調整 2. 試験場圃場試験の開始、試料調整 |
食料 |
R06-0167 | 2024年07月 - 2024年09月 | ガーナ, マダガスカル | 1. ヤムへの15N標識肥料の施肥処理 2. 現地圃場試験の開始、マメ科播種、土壌採取 3. 農家圃場視察、農家圃場サンプリング、試料調製 4. 試験場圃場サンプリング、試料調製 |
食料 |
R06-0006 | 2024年04月 - 2024年04月 | マダガスカル | 根系改良系統を用いた現地圃場実験および穂数改良系統の品種登録試験収穫調査 | 食料 |
研究成果情報
- ゲノム編集でOsTB1遺伝子の機能を弱めたイネはリン欠乏条件での収量性が高い(2023)イネの分げつ伸張抑制遺伝子TEOSINTE BRANCHED1 (OsTB1) の機能をゲノム編集により弱めることで、背景品種X265に比べて、分げつ数が2割増加した変異体が作出される。同変異体は、リン欠乏条件での籾収量が背景品種に比べて4割多い。OsTB1遺伝子の機能を調整することで、分げつが抑制されるリン欠乏環境でのイネの生産性向上が期待される。
- 含水比に基づくリン施肥診断に有効な水田土壌のリン吸着能の簡易推定法(2023)リン肥料の施肥効率にかかわる水田土壌のリン吸着能は、密閉容器内で飽和食塩水(飽和塩化ナトリウム水溶液)とともに1週間静置した土壌の含水比によって高い精度と再現性で推定できる。危険な試薬や高価な機器を要する化学分析を必要としないため、分析環境が十分に整わないサブサハラアフリカなどにおいても、リン肥料を優先的に施用する圃場を選別するために利用できる。
- 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは冠水害の回避にも有効(2023)リン欠乏水田で高い施肥効果を発揮するリン浸漬処理P-dippingは、水稲の生育日数を短縮して低温ストレスリスクを軽減するだけではなく、初期生育を改善するため、突発的な水位上昇にともなう冠水害の回避にも有効である。さらに、P-dippingと組み合わせることで、窒素施肥の効果が大きくなることから、P-dippingは様々な圃場環境や窒素施肥に効果的な技術である。
- 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは4.5~6.5葉程度の苗を用いると増収効果が高い(2023)水稲の移植時に、リン肥料を混ぜた泥を苗の根に付着させるリン浸漬処理P-dippingでは、葉齢が4.5~6.5葉程度の苗を用いることで、最も高い増収効果が得られる。葉齢が4.5程度より小さい場合には苗の根に付着するリン量が少なく、6.5程度より大きい場合には肥料焼けにともなう苗の植え傷みが生じることで、P-dippingによる増収効果が低くなる。
- ゲノム予測モデルを用いた亜鉛強化米育種のための有望系統の同定(2022)
マダガスカルの農家圃場での観測値と一塩基多型情報をもとに構築されたゲノム予測モデルにより、国際稲研究所のジーンバンクに保存された3,024系統の玄米の亜鉛含量は系統間で17.1~40.2 mg kg-1の変異を持つと推定される。同モデルで3,024系統から選抜されたアウス種IRIS313-9368はマダガスカルの多様な生産圃場で安定して高い亜鉛含量を示すことから、亜鉛強化米育種への利用が期待できる。
- マダガスカルにおける水稲収量の増加は農家の栄養改善に有効である(2022)
マダガスカルの農村地域において、水稲収量が増えると、農家はコメの自家消費量だけではなくコメを販売した現金収入による栄養価の高い食品(野菜、果物、肉・魚)の購入量も増加させる。これらの消費および市場での購買行動の多様化により、主要穀物の生産性向上が、エネルギー摂取量だけでなくビタミンA、亜鉛、鉄分などの微量栄養素の摂取量の増加、すなわち栄養の量と質の両面において栄養改善に貢献することが示唆される。
- リン欠乏水田でのリン施肥による水稲増収量は土壌リン吸着能から推定できる(2021)マダガスカルに広く分布するリン欠乏水田において、リン肥料を施用した際のイネの増収量は、近接する圃場間でも大きく異なり、土壌のリン吸着能が高いほど低下する。
- 深層学習で熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を推定するモデル(2021)土壌の分光データを使用した深層学習により、農耕地および自然植生を含む熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を迅速かつ高精度に推定できる汎用性の高いモデルを開発できる。
- イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法(2021)リン欠乏土壌ではイネの出穂が遅延するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では低温不稔が助長される。低温不稔のリスクが高い圃場にリンを施用することで、リン欠乏と低温不稔の双方の改善につながり、増収効果を高めることができる。
- 量的遺伝子座MP3の導入は養分欠乏によるイネの穂数不足を緩和する(2020)
サブサハラアフリカにみられる養分欠乏土壌では、イネの分げつ発生の抑制に伴う穂数不足が収量制限要因の一つとなっている。日本型品種コシヒカリからインド型多収品種タカナリに導入した量的遺伝子座MP3は、マダガスカルの2.0~4.1 t ha-1の低収量環境において、分げつ発生を促進し、穂数および籾数を増加させることができる。