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533. 農業生産多様性が子どもの栄養状態に及ぼす影響

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533. 農業生産多様性が子どもの栄養状態に及ぼす影響

栄養不良は発達途上の子供たちにとって特に深刻な問題であり、生涯にわたって続く大きな影響をもたらします。マダガスカルでは、摂取するエネルギーの不足に加え、微量栄養素の摂取量にも不足がみられます。今回は、SATREPSマダガスカルプロジェクト(Fy Varyプロジェクト)において、マダガスカルの農村を対象として、各農家の農業生産の多様性、食の多様性、そして子供の栄養状態への影響をみた論文(Ramahaimandimby et al. 2022)を東京大学との成果として発表したので紹介します。

本論文では、マダガスカル中央高地の農家を対象としたパネルデータをもとに、農業生産の多様性や各作物の栽培が食の多様性に与える影響、また食の多様性が子どもの栄養状態に与える影響を計量経済学の手法を用いて他の要因をコントロールしながら分析しています。

まず、農業生産の多様性が食の多様性に与える影響です。主食ばかりの食事に比べ、多様な食品が含まれる食事は栄養バランスが良く、微量栄養素摂取不足の解消に貢献します。食の多様性には、自家生産だけなく市場での食品の購入を通じて実現したものも含まれますが、生産した食品群の数は、(食の多様性を示す)消費した食品群の数に有意に正の影響を与えていることが分かりました。

さらに、自家生産の実施が栄養素摂取量に与える影響を食品群別にみてみると、エネルギーや微量栄養素(ここでは鉄と亜鉛)の摂取に対して、穀類・イモ類・野菜生産などは有意な影響がみられなかったのに対し、豆類の生産は有意に正の影響を及ぼしていました。

また、食の多様性が子どもの栄養状態に与える影響をみると、短期的な栄養状態の指標となる身長に対する体重のスコアの向上に関係していることがわかりました。なおエネルギーや微量栄養素の摂取が子どもの栄養状態に正の影響を与えることは既に言われていますが、本論文でもエネルギーや亜鉛の摂取についてそれを確認しました。

子どもの栄養を改善するために、豆類のような栄養価の高い作物を栽培することが貢献できるのではないかと考えられます。

本成果は、Japanese Journal of Agricultural Economicsに、”Comparison of Two Pathways Linking Agriculture to Child Health: Dietary Diversity and Micronutrient Intake in the Malagasy Highlands”と題して発表されたものです。

(参考文献)
Ramahaimandimby, Z., Shiratori, S., and Sakurai, T.* (2022). Japanese Journal of Agricultural Economics, 24:46-51.
FyVaryプロジェクト https://www.jircas.go.jp/ja/satreps

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

 

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