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214. 気温上昇、降雨量増加が子どもの食の多様性に与える影響

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気候変動は、食料安全保障と食生活の多様性の両方に負の影響を及ぼすと広く考えられています。食の多様性は、とりわけ子供にとって、成長に欠かせない栄養素(微量栄養素を含む)を供給するために重要なものです。しかしこれまで地球レベルの気候変動と食の多様性の関係についての実証研究・エビデンスは限られていました。


2021年1月にEnvironmental Research Letters誌で公表された論文において、著者らは19か国の10万7千人以上の子供の調査データと30年間にわたる降雨・気象データをもとに、農業生態学的・地理的・社会経済的要因をコントロールしつつ、気候と子供の食の多様性の関係について分析を行いました。


分析の結果、長期的な気温の上昇は子供の食の多様性と負の相関がみられる一方、長期的な平均降雨量を基準とした前年の降雨増加は食の多様性に正の相関がみられました。アジア、中央アメリカ、北アフリカ、南米、南東アフリカ、西アフリカの6地域をそれぞれ分析すると、5つの地域で気温の上昇と食の多様性の減少がみられ、3つの地域で降雨量の増加と食の多様性の増加の関係が確認されました。西アフリカでは、降雨量の増加が、気温上昇による食の多様性への負の影響を相殺しているようです。幾つかの地域において、気候が食の多様性に及ぼす統計的な影響は、教育、水やトイレの改善、貧困削減などの開発努力に相当する、またはそれ以上と考えられました。これらの結果は、気温上昇と降雨変動の上昇は、子供の食の多様性ひいては栄養状態に短・長期的な影響を与え、食料安全保障改善のための開発介入を弱体化しかねないことを示唆しています。

国際農研は、国際的な食料需給と栄養供給の現状分析や将来予測のための計量モデルを構築し、過去評価や将来予測を行っています。また、世界の食料安全保障を確立し、栄養状況を改善するための研究・技術開発の方向性を提言しています。

 

参考文献

Niles MT et al. Climate impacts associated with reduced diet diversity in children across nineteen countries. Environ. Res. Lett. 16 015010. https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/abd0ab

(文責:研究戦略室 飯山みゆき 白鳥佐紀子)
 

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