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289. 米国における気温・降雨量のニューノーマル公表

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新型コロナウイルス感染症パンデミックが生活のあらゆる側面に影響を与える中、ニューノーマルNew Normals(新しい通常・平常・日常)という用語がニュースでも盛んに話題になりました。

気象界でのニューノーマルは、30年間の気温や降雨量の平均値や統計値をもとに10年ごとに更新されるデータセットを指すそうです。これらデータセットは日々の気候関連の意思決定を適切なコンテクストで行うことを可能にします。

5月4日、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、1991-2020年の30年間の気候ノーマル(Climate Normals)データセットを公表したと発表しました。直近の30年間を、10年前以前の30年間と比較すると、米国全体でより気温が高く、降雨量が増加したと報告されました。ただし、米国において一様に気温上昇・降雨量増加するのではなく、空間・季節的に大きな差異があったことが指摘されています。南部・南西部は大幅な気温上昇、西部や東海岸も全体的に気温上昇傾向にあります。他方、研究者も意外なトレンドと認めたように、ノースダコダ、サウスダコダ、ミネソタ、モンタナなどプレーンズ地帯北部などでは、1981-2010年のノーマルと比較し、1991-2020年のノーマルは若干涼しく(とりわけ春に)なっていました。降雨量からみると、東部やロッキー山脈、また南東部など、降雨量が増えたのに対し、南西部は乾燥しました。ただし、乾燥している地域でも、降るときには大量の降雨をもたらすという極端現象を伴う可能性もあるとのことです。

これらのデータは、日々の天気予報だけでなく、農民が作付けすべき品種やタイミングを決定する判断に用いられます。予測範囲を超えるような気象予測に関するそのほかの重要な経済的意思決定も、気候ノーマルを参照にされます。


アメリカは日本の最大の食料貿易相手国ですが、特にプレーンズ地方西部は肉牛の放牧、北部では、トウモロコシ・大豆・小麦・綿花・テンサイ(ビート)などの主生産地である穀倉地帯だそうです。米国の気候ノーマルは日本の食料安全保障にも影響を及ぼす可能性が高いです。同時に、バイデン政権のもとでの気候変動対策は、世界各国の動向にも影響を与えるでしょう。


参考文献
NOAA Delivers New U.S. Climate Normals. May 4, 2021. https://www.ncei.noaa.gov/news/noaa-delivers-new-us-climate-normals
https://www.ncei.noaa.gov/news/noaa-delivers-new-us-climate-normals 

AccuWeather. US is becoming warmer with each decade, new numbers reveal. Published May. 5, 2021 https://www.accuweather.com/en/weather-news/new-noaa-1991-to-2020-clima…

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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