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51. 新型コロナウイルス・パンデミック -人間開発の危機

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国際連合開発計画(UNDP) は、平均余命、教育及び所得指数を複合的に捉えた人間開発指数(Human Development Index, HDI)を毎年公表しています。2020年5月20日、UNDPは、今年、HDIが1990年に導入されて以来30年間で初めて下落する可能性について述べ、懸念を表明しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、保健・教育・所得の3側面に打撃を与えることで、2007-09年の世界金融危機でも経験しなかった人間開発の危機をもたらしています。

COVID-19による死亡者は30万人を超え、一人当たり所得は世界平均で4%下落する見込みです。学校閉鎖により、インターネットアクセスのない児童数で調整された小学校就学年児童割合で示される実効的な休学率は、60%の子供たちが教育機会を奪われていることを示しており、1980年代以来経験しなかった危機が起きていることを示しています。これらのインパクトを合わせると、人間開発の進歩を覆す記録的な出来事であると言えます。しかもこれは、ジェンダー格差の問題を考慮していません。

COVID-19は、拡大鏡のごとく格差問題を浮き彫りにしています。人間開発指標の下落は、先進国にくらべ、パンデミックの社会経済的影響への対応能力に劣る途上国でより深刻となることが予想されます。教育面では、学校閉鎖やオンライン教育へのアクセス格差により、初等教育就学児童の実効的休学状況は、人間開発指標の高い国では20%であるのに対し、人間開発指標の低い国においては86%にのぼります。

他方、インターネットアクセスの平等化を通じ、教育格差を縮小することは可能です。決意ある介入はCOVID-19パンデミックのインパクトを緩和することで、社会経済に貢献します。格差に焦点をあてたアプローチはコスト面でも有効です。今回COVID-19対策として講じられている財政措置の1%程度で、低・中所得国におけるインターネットアクセス格差の改善が可能と推計されています。

COVID-19対策の上で、持続的で、ジェンダーに配慮し、ガバナンスを重視する平等に主眼を置いたアプローチは、「ニューノーマル」社会の実現にとって不可欠な社会経済的対応です。この複雑な危機への対応として、UNDPは次の5つを提言します。保健制度・サービスの維持強化、社会保障の増強、中小企業・インフォーマル部門の労働者保護、万人を対象としたマクロ政策遂行、社会的団結を強めるための平和・ガバナンス・信用の促進。

 

参考文献

UNDP COVID-19: Human development on course to decline this year for the first time since 1990 https://www.undp.org/content/undp/en/home/news-centre/news/2020/COVID19_Human_development_on_course_to_decline_for_the_first_time_since_1990.html

http://hdr.undp.org/en/hdp-covid

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)