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22. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 飢餓のパンデミック
国連世界食糧計画(国連WFP)は、新型コロナウイルス(COVID-19)によって、急性の飢餓が2020年末までに2億6500万人にのぼるリスクがあるとの懸念を表明しました。この数字は、今月食料安全保障情報ネットワーク(FSIN)から発行された報告書「食料危機に関するグローバル報告書:2020年版」で示された1億3500万人の2倍近くにも及びます。
報告書は新型コロナウイルスのパンデミックが出現する前に作成されたもので、55か国で1億3500万人が、主に紛争、気候変動の影響、および経済危機の結果として深刻な飢餓に直面していると推測していました。今回新たに出された数字では、迅速な対応がとられない限り、さらに低中所得国の1億3千万人の生命と暮らしがリスクにさらされるとしました。この数字は、私たちの直面している大災害の規模を表しています。
ウイルスによる健康被害の拡大が特に懸念されるのは、紛争地域に住む人々や、自宅を離れて難民キャンプに入らざるをえない人々です。混雑したキャンプではウイルスが蔓延する可能性があります。同様に、窮屈で不衛生な都市のスラムに住む人々も危険にさらされるでしょう。
さらに新型コロナウイルスの影響は健康被害だけに留まらず、第2波と第3波に備える必要があるとされました。人々は生活と収入を失っており、同時にサプライチェーンが混乱しています。これらは、世界中で飢餓の幅広さと底深さの両方が拡大するダブルパンチになります。
都市部の中産階級、日雇い労働者、インフォーマルおよびサービス部門で働く人々が突然貧困に陥ることが懸念されます。都市部では人々は食料を市場での購入に依存しているため、価格変動や食料の入手可能性に対してより脆弱だといえます。特に、大規模なセーフティネットプログラムを開始するのに十分な財政的余裕がない貧しい国々では、購買力の突然かつ急激な低下が問題となります。
アフリカや中東の国々にとっては貿易の停滞による深刻な影響が予期されます。サブサハラアフリカ諸国は、2018年に世界中から4000万トンを超える穀物を輸入しました。輸入に依存していると、世界的な危機の際の価格変動などのリスクに対して脆弱になります。同時にアンゴラやナイジェリア等、燃料輸出に依存する国々も大きな打撃を受けると考えられます。貿易が止まると人道活動も止まります。何百万もの人々の生活が貿易に依存しており、食料安全保障への影響が懸念される一方、食料のため込みや貿易障壁の設置はしばしば機能しないとして、貿易促進を訴えました。
国連WFPは、COVID-19に関連した情報提供を行っています。Hunger Map LIVE(hungermap.wfp.org/)やHunger Analytics Hub(https://dataviz.vam.wfp.org/Hunger-Analytics-Hub)では、国連WFPの活動している国々の飢餓の状況やCOVID-19のデータがほぼリアルタイムでモニターされています。
すでに飢餓の危機に瀕している何千万人もの人々が、このウイルスによって、健康に加え、生活と収入の損失という経済的影響にも負けないようにする必要があります。各国政府は国民を支援するためにできる限りのことをしているとしつつも、最も脆弱な人々に対するさらなる迅速な支援を行うため、国連WFPは資金拠出を呼びかけています。
参考文献
World Food Programme Insight. Risk of hunger pandemic as COVID-19 set to almost double acute hunger by end f 2020. https://insight.wfp.org/covid-19-will-almost-double-people-in-acute-hunger-by-end-of-2020-59df0c4a8072 Accessed on April 22, 2020.
The Food Security Information Network (FSIN). 2020 Global Report on Food Crises. https://www.fsinplatform.org/sites/default/files/resources/files/GRFC_2020_ONLINE_200420.pdf accessed on April 22, 2020.
WFP. HungerMap LIVE. https://hungermap.wfp.org/ accessed on April 22, 2020.
WFP. Hunger Analytics Hub. https://dataviz.vam.wfp.org/Hunger-Analytics-Hub accessed on April 22, 2020.
(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)