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26. 新型コロナウイルス・パンデミック ―国連食糧農業機関 (FAO)政策提言: 不況と飢餓

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国連食糧農業機関(FAO)は、4月24日に発表したポリシーブリーフ(政策提言)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の引き起こす世界的な不況による長期的な飢餓や食料不安への影響を緩和する政策が必要との見方を示しました。

COVID-19が世界経済に及ぼす影響の大きさにはさまざまな予測がありますが、世界経済に歴史的な低迷をもたらすことは間違いありません。国際通貨基金(IMF)は2020年の世界経済見通しについて、1月時点では3.3%の上昇を予測していたところ、4月時点では3.0%の下落に加えて多くのリスクを含むという予測に修正しました。また、世界銀行は、サブサハラアフリカにとってはこの25年間で初めての不況に直面するだろうと報告しています。

FAOが過去の食料供給(飢餓と関連)と経済動向を分析したところ、タイムリーで効果的な政策が無い場合、新型コロナウイルスが引き起こした景気後退の結果として、何百万人もの人々が飢餓に陥る可能性が高いと指摘しています。具体的な数は景気後退の深刻さを変化させたシナリオごとに異なりますが、新型コロナウイルスが世界的な景気後退をもたらし、すべての国の2020年のGDP成長率を2-10%引き下げたとすると、食料の純輸入国において1440万人から8030万人の食料不足人口を引き起こすと予想しています。またその食料不足人口の増加の多くは低所得国の人々だと考えられています。さらに、もし食料アクセスにおける現在の不平等が悪化した場合には実際の結末はより酷いものになると警告しています。

今回の新型コロナウイルスに対応するために、各国政府は大規模な政策介入を行う必要性が生じました。FAOは、すべての国の経済刺激策で、貿易の流れを維持し、フードサプライチェーンを存続させ、農業生産を増加させるために最善を尽くすよう求めています。

同時に重要なのは食料アクセスで、食料へのアクセスの不平等が拡大するようなことはあってはなりません。今回の危機は、多くの中低所得国において長年の問題である、健康的な食料へのアクセスの不平等に取り組むチャンスだとも考えられます。現金給付や所得補償、食料配布などは最も脆弱で貧しい人々に向けられるべきです。最貧国および最も脆弱な国を支援するためには国際協力と援助も必要です。

パンデミック時の食料アクセスを強化することを目的とした公的刺激策は、フードシステムに強靭性をもたせる機会ともなります。そしてそれは、将来の経済の縮小や後退の際にもフードシステムが守られることにもつながっていくのです。

参考文献

FAO (2020). COVID-19 global economic recession: Avoiding hunger must be at the centre of the economic stimulus. http://www.fao.org/3/ca8800en/ca8800en.pdf  Accessed on May 1, 2020.

FAO (2020). COVID-19: Using economic stimulus to reduce the long-term hunger impact. http://www.fao.org/news/story/en/item/1273127/icode/ Accessed on May 1, 2020.

World Bank (2020). An analysis of issues shaping Africa’s economic future. Africa’s Pulse, Volume 21. https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/33541  Accessed on May 1, 2020.

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)

Food-importing countries used in the GDP growth reduction scenario analysis (http://www.fao.org/3/ca8800en/ca8800en.pdf)

Rising undernourishment in three hypothetical GDP growth reduction scenarios (http://www.fao.org/3/ca8800en/ca8800en.pdf)

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