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67. 新型コロナウイルス・パンデミック - 国連政策提言: COVID-19の食料安全保障と栄養へのインパクト

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2020年6月9日、国連は「COVID-19の食料安全保障と栄養へのインパクトThe Impact of COVID-19 on Food Security and Nutrition 」とするポリシーブリーフ(政策提言)を発表しました。

新型コロナウイルス感染症パンデミックは、それ以前から飢餓と栄養失調に苦しんでいた世界中の数百万人の食料栄養安全保障を脅かす保健医療・人道危機です。COVID-19対策と迫りくる世界経済不況への緩和策に関する大規模な協調なければ、フードシステムの機能は破綻し、過去50年に経験したことのない規模での保健・栄養危機に陥りかねません。

COVID-19を抑え込むための措置は、グローバルフードサプライチェーンに影響を与えています。国境封鎖やロックダウンによって、世界の地域によっては、数百万人の季節労働者の仕事が消失し、食肉加工工場は閉鎖を迫られ、消費需要の落ち込みにより生鮮食品やミルクを廃棄せざるを得ない農民もいます。その結果、都市部の人々は、新鮮な青果物や乳製品・肉・魚の入手に不便している状態です。

世界の穀物市場は、2019年の豊作と十分な備蓄により、これまでのところ安定しています。しかし世界の人口の多くはローカルな市場で食料を調達しており、物流寸断の影響を受けています。失業・所得の喪失・食料価格の上昇によって、食料確保に不便する人々も出ており、食料価格の上昇が起きている国もあります。

パンデミック以前、既に8.2億人の人々が慢性的に食料安全保障の危機にあると推定されていました。最新のデータでは、1.35憶人が食料危機の状況にあり、COVID-19によりその数は年末までに倍増しかねません。また5歳以下で慢性的栄養失調(stunting)にある子供は5人に一人の1.44憶人、急性栄養失調(wasting)状況の子供は4700万人とされていますが、さらに拡大することが懸念されています。5月末までに3.68憶人の学童が給食の機会を失っています。2020年にパンデミックは4900万人を絶対的貧困においやり、世界GDPが1%落ち込むごとに追加的に70万人の子供が慢性的栄養失調に陥ることが予測されています。サプライショックの影響と合わせ、所得減によって急性の食料・栄養不足に陥る人々の数は今後3-4か月で急増するでしょう。

COVID-19パンデミックは、国境を越えた紛争、自然災害、気候変動、病害虫・疫病の発生によって既にフードシステムが危機的状況に置かれているタイミングでやってきました。例えば東アフリカは、洪水・バッタ被害・COVID-19発生という相互に破滅的な影響を持つ「3つの危機triple menace」に直面しています。

COVID-19パンデミックは、世界のフードシステム転換の必要性について警鐘をならしています。フードシステムは、人為的な温室効果ガス排出の3分の1程度寄与し、生物多様性喪失の主要要因とされ、気候変動・地球環境危機の要因の一つでもあります。食料生産、加工、マーケティング、消費において無駄にされる資源について再考し、フードシステムをより包括的で持続的で強靭なものに転換するよう考えねばならない時期に来ていると言えます。

 

参考文献

United Nations. Policy Brief: The Impact of COVID-19 on Food Security and Nutrition JUNE 2020.  https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/sg_policy_brief_on_covid_impact_on_food_security.pdf

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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