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31. 新型コロナウイルス・パンデミック ― グレート・ロックダウン (大封鎖) vs. グレート・リセッション(経済不況)

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国連食糧農業機関(FAO) は、報告書『危機の比較:グレート・ロックダウンvs.グレート・リセッション(Comparing crises: Great Lockdown versus Great Recession)』を公表しました(Schmidhuber and Qiao 2020)。グレート・リセッション(経済不況)は、2000年代後半から2010年代初頭までの間に世界市場で観察された大規模な景気後退を指します。今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うグレート・ロックダウン(大封鎖)が起こるまで、グレート・リセッションは、第二次世界大戦以来最悪の大規模景気後退局面であると言われてきました。二つの危機の違いについて、報告書は以下のようにまとめています。

 

1. グレート・ロックダウンは、グレート・リセッションよりも深刻な経済低迷 (GDPの縮小) をもたらすとみられる。

2.グレート・リセッションの際には高所得国が影響を被る一方低所得国ではGDP成長率に殆ど変化が見られなかったが、今回のグレートロックダウンでは、低所得国でもGDPの落ち込み(とくに危機前のベースライン予測に対し)が予測される。

3. とりわけ打撃をうけるとされるのは、農業輸出を含む商品輸出に過度に依存した欧州や南米の新興市場である。

4. 中でも最大の被害を受けるのが小規模な島嶼開発途上国家 (Small Island Developing States: SIDS) である。

5. グローバルな危機に直面し、2020年の世界は以前よりうまく対応しているのは確かである。高所得国では、中央銀行は金融緩和の措置をわきまえているし、追加的な資本ニーズにも応える手段も持ち合わせている。財政面でも、政府は支出上限を引き上げている。しかし、低所得に関しては、外貨建を含む膨大な債務累積は貸し渋りや債務不履行をもたらしかねない。既に、対外債務のリスケがアナウンスされていることからも兆候は明らかである。

6. 世界農業をとりまく条件は、今のところ世界的食料危機の回避に有利に働いている。(グレート・リセッション時と対照的に) 食料生産の見込は明るく、備蓄も十分あり、国際穀物価格は低く安定、貿易には多くの輸出・輸入者が参加、大量輸送コストは抑制され、肥料や投入財費用も低く、エネルギー価格はむしろ崩壊、バイオ燃料との競合も実質的に不在である。

7. グローバル市場には供給が十分あり、さらなるショックも耐えられそうではあるが、国・地域によっては問題は深刻化しうる。とりわけ小規模な島嶼開発途上国家 (SIDS)は、観光収入と送金が途絶える中、過度に食料輸入に依存しており、今回の危機に極めて脆弱である。

8. 低所得国・高所得国とも、労働集約的な農業はCOVID-19の影響を真っ向から被っている。とりわけ、COVID-19関連の健康問題や労働者の移動規制を通じ、自給自足的農民や農業労働者に大打撃を与える。

9.サブサハラ・アフリカで見られるように食料安全保障が既に危機的状況に置かれているような国では、病害虫(バッタ、アフリカ豚熱) 、異常気象、治安悪化などの既存の危機とCOVID-19に同時に直面することで、食料安全保障の危機が増幅することが懸念される。

10.国際食料市場レベルでは、輸出規制を回避することが最優先事項である。SIDSや複数の危機にさらされている国に重点的支援が行われる必要がある。

 

参考文献

​​Schmidhuber, J. And Qiao, B. 2020. Comparing crises: Great Lockdown versus Great Recession. Rome, FAO. https://doi.org/10.4060/ca8833en

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

 

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