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41. 新型コロナウイルス・パンデミック ― ロックダウン下の青果物グローバル・サプライ・チェーン

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2020年5月16日の報道によると、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 拡大の影響で、日本ではバナナやマンゴーといった海外産フルーツに品薄感が広がっています。産地の都市封鎖(ロックダウン)で収穫作業が停滞したり、航空機の減便で貨物量が減少しているのが原因とされています。フルーツや野菜のような生鮮食品かつ高付加価値農産物は、旅客機の腹部にあるベリーと呼ばれるスペースに手荷物などと一緒に積み込まれます。各国航空会社の相次ぐ国際線の減便・運休で、輸送費が上昇し仕入れコストは2割ほど増えているそうです。メキシコ産アボカド、米国産レモンや5~6月が旬のアメリカンチェリー、南アフリカ産のグレープフルーツの入荷にも影響が出ると見られています(読売オンライン) 。

World Economic Forumの記事によると、現在、国際貨物の4割は、旅客便の貨物スペースで運ばれるているそうです。「ノーマル」時には、世界中に張り巡らされた旅客機ネットワークが貨物輸送の相当部を担い、グローバルサプライチェーンにおける効率的でスムースな物流を可能にしていました。しかし現在、旅客機で貨物に割ける割合は「ノーマル」時から大きく落ち込み、貨物能力は大幅に下がっています。残り60%の航空貨物は通常専用貨物機によって執り行われていますが、これらは基本的にハブ空港経由で重要ルートを辿るため、旅客機の包括的なネットワークには及ばないそうです。

BBC World Service番組では、ロックダウンのグローバル・サプライチェーンへの影響を取り上げていました。近年、グローバル・サプライチェーンの展開により、野菜やフルーツなどの青果物は南米やアフリカの新興国で生産され、欧米に輸出されてきました。アルゼンチンのブラックベリー、チリのブルーベリー、ザンビアのスナップエンドウが欧米のスーパーマーケットで入手できるようになっています。しかし、COVID-19による旅客機減便に伴う貨物運賃の上昇により、これら産品の供給は滞り、割高となっています(Pick Up 40でも言及したように、アフリカの青果物最大市場であるEUでは、ケニアのアボカド、南アフリカの柑橘類、モロッコの野菜などを含む農産物への需要が大きく落ち込みました)。ロジスティック・サプライチェーン専門家のRichard Wildingワーウィック大学教授は、COVID-19後の「ニューノーマル (the new normal) 」期に、グローバルレベルで選択肢の合理化(the global rationalization of choice)と生産・加工をローカルへの事業移転(nearshoring)・機械化を通じた再編が起こり得ることを踏まえ、新興国の生産者が打撃を受ける可能性に言及しました。

 

参考文献

BBC World Service. How do you feed a world in lockdown? https://www.bbc.co.uk/programmes/w3ct0snh

World Economic Forum. Coronavirus and aviation: Why is air cargo grounded when the world needs it most?  April 30, 2020. Isobel Fenton https://www.weforum.org/agenda/2020/04/coronavirus-aviation-why-is-air-cargo-grounded-when-the-world-needs-it-most/

読売新聞オンライン「バナナやマンゴーなど海外産フルーツに品薄感…産地封鎖で収穫停滞、航空機減便も影響」2020.5.16. https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200516-OYT1T50184/ 

Pick UP 40. 新型コロナウイルス・パンデミック ―国際農業開発基金 (IFAD) - COVID-19 対策によるアフリカ農業と農村貧困層支援 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200516

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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