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1214. アマゾンの森林破壊により、雨季・乾季の降雨パターンが極端化する

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1214. アマゾンの森林破壊により、雨季・乾季の降雨パターンが極端化する

 

大気中の水分の流入と再分配の変化は、降雨パターンに影響を及ぼします。森林破壊は、水収支、風向パターン、地球表面と大気間の熱と放射の流れを変えることで、地域の気候に影響を及ぼします。森林破壊は、森林生態系に閉じ込められた炭素が二酸化炭素として大気中に放出される結果、地球規模の気候変動にも寄与しているという事実によって、状況はさらに複雑になっています。これらの影響の相互作用により、森林破壊が降雨量に及ぼす全体的な影響は、特にアマゾンの熱帯雨林のようにデータが乏しい地域では、定量化が非常に困難であることが知られています。さらに、従来の研究では年間平均の影響に焦点が当てられ、季節変動が無視される傾向がありました。

Nature 誌で公表された論文は、森林破壊後のアマゾンの季節的な降雨量変化について衛星データと気候シミュレーションを用いて分析し、森林破壊は雨季には降雨量を増加させるが、生態系が最も水を必要とする乾季には降雨量を減少させることを示し、気候調節機能を持つ森林の伐採を防ぐ必要性を強調しました。

熱帯地方の樹木伐採には、降雨反応を引き起こす 2 つの主な影響があります。まず、植生から蒸発する水の量が減少し、大気に入る水分の量が減少し、降雨の可能性が低下します。次に、森林破壊により地表が比較的暖かくなり、上昇気流と低気圧の形成を引き起こす可能性があります。このような「熱低気圧」は風上地域から水分を引き寄せ、森林破壊された部分の雲量と降雨量を増加させますが、風上地域の降雨量は減少します。特定の場所において 2 つの影響のどちらが優勢であるかにより、森林破壊された地域では降雨量が増加または減少する可能性があります。

論文著者らは、雨季 (12 月から 2 月) には、森林破壊によって伐採された森林の区画に向かって大気中の水分が輸送され、局所的に降雨量が増加し、風上の降雨量が減少することを発見しました。つまり、雨季には熱の低さとそれに伴う風循環反応が主な影響となります。対照的に、乾季 (6 月から 8 月) には、植生からの蒸発が減少し、大気中の水分の可用性と降雨量が広範囲にわたって減少することが主な影響となります。シミュレーションと衛星データは、この季節的なコントラストを一貫して示しており、調査結果の信頼性を補強しています。

森林破壊は当初、中緯度地域で問題となっていましたが、2000 年以降、アマゾン盆地、アフリカのコンゴ盆地、東南アジアなどの熱帯地域で深刻化しています。これらの熱帯地域は、決定的な措置が取られない限り、引き続き世界的な森林破壊のホットスポットであり続けるでしょう。森林破壊と気候変動が重なり、降雨量が減少すると、植生が劣化して水分の蒸発量が減少する可能性があります。これにより、降雨量の減少がさらに悪化し、フィードバック機構が引き起こされて、アマゾンの森林の広範囲にわたる枯死につながる可能性があります。専門家は、温暖化が産業革命以前の水準より 2 °C 上昇すると、アマゾンはサバンナのような状態に陥る可能性があると推定しています。温暖化と森林破壊の複合的な影響により、2050 年にはアマゾンの森林の 10~47% が予期せぬ生態系の移行のリスクにさらされる可能性があります。

気候変動、森林破壊、植生の健康の相互作用が結びついて初めて、崩壊のリスクを真に評価できます。本研究が示した季節性を考慮すると、アマゾンの森林はサバンナのような状態に陥る可能性があります。干ばつや猛暑など、これまでの取り組みがこの過程において不可欠なステップとなるでしょう。

 

(参考文献)
Qin, Y., Wang, D., Ziegler, A.D. et al. Impact of Amazonian deforestation on precipitation reverses between seasons. Nature 639, 102–108 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08570-y

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

 

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