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945. 気候変動がアマゾン盆地における干ばつの主要因

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945. 気候変動がアマゾン盆地における干ばつの主要因

 

極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、1月24日、ブラジルのアマゾン盆地における極度の干ばつの主要な原因は、エルニーニョ現象ではなく、気候変動である、とする分析結果を公表しました。

2023年半ば以来、アマゾン盆地は平年に比べ異常に少ない降雨量と高い気温が続き、極度の干ばつ状態に陥っています。アマゾン盆地は世界で最大の熱帯林を抱え、生物多様性のホットスポットで、世界の水・炭素循環に極めて重要な役割を果たしています。しかし川の水量は過去120年間で最も少なく、ブラジル・ペルー・コロンビア・ベネズエラ・エクアドル・ボリビアといった国々をまたがるアマゾン盆地の推定3000万人の住民を孤立させ、生態系を危機にさらしています。

WWA研究者らによる分析の結果、気象記録のデータセット上、今回の干ばつは、今日の気候においても例外的で、干ばつを評価するための統計指数である標準化降水指数(Standardized Precipitation Index:SPI)的には100年に1度、蒸発散量を考慮した標準化降水量蒸発散量指数(the Standardized Precipitation-Evapotranspiration Index: SPEI)では50年に1度の出来事であったといえます。分析によると、エルニーニョは気候変動と同程度降雨量を減らしましたが、強い乾燥状態は主に世界気温の上昇によって引き起こされたため、今回の干ばつの激しさは気候変動によるところが大きいと結論づけられています。観測値と気候モデルの比較によって、人為的な気候変動の影響を評価したところ、気候上の干ばつの起こりやすさは10倍、農業上の干ばつの起こりやすさは30倍程度上昇したと推計されました。

研究者らは、化石燃料燃焼と森林破壊を止めない限り、こうした極端な干ばつの頻度は上昇し、産業革命以前比で2℃以上の温暖化のもとで、農業的な干ばつは4倍(10-15年ごと)、気象的な干ばつは3倍(30年ごと)起こりやすくなるとし、気候変動緩和・適応策の緊急性に言及しました。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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