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640. 2022年夏、北半球における干ばつへの気候変動の影響

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640. 2022年夏、北半球における干ばつへの気候変動の影響

2022年夏、欧州、北米、中国などで極端な水不足と熱波が観察されました。とりわけフランス、ドイツなどでは土壌が極度に乾燥し、中国本土でも異常な高温と干ばつを経験しました。土壌水分の不足は、作物の不作、山火事リスクの増加に加え、既に高騰している食料価格に影響を及ぼすことで世界の食料安全保障を脅かしかねません。

極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、西~中央ヨーロッパ(West-Central Europe)および北半球中高緯度地域(the Northern Hemisphere extratropics)を対象に、人為的な気候変動が、表層および多くの作物の根圏にあたる土壌水分低下をもたらす確率と強度に、どの程度影響を及ぼすかを評価しました。

土壌表層モデルを用いた分析結果は、2022年に観察されたような夏季における低い表層・根圏土壌水分状態は、今日の気候条件のもとで20年に一度起こりうるが、20世紀初頭で起こる確率はもっと低かったであろうとし、人為的な気候変動が土壌乾燥状態をもたらす確率を上昇させた可能性が高いことを示したそうです。

エビデンスをまとめた結果、西~中央ヨーロッパにおいて、人為的な気候変動は2022年の根圏土壌水分の干ばつを3-4倍、表層の土壌水分の干ばつを5-6倍、高めた可能性があります。

北半球中高緯度地域に関しては、土壌水分干ばつに人為的な気候変動がもたらす影響はもっと大きく、根圏部分で少なくとも20倍、表土で5倍とも推計されました。ただし、これらの指標は実際に量的に観測することは困難であり、確率に関する数値には不確実性を伴います。

モデルはさらに、地球の温暖化に伴い土壌水分干ばつの頻度が高まることを示しており、これはIPCC AR6で報告された長期的な気候モデルのトレンドとも一致しているとのことです。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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