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376. 北極の温暖化と北半球の寒波の関係

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376. 北極の温暖化と北半球の寒波の関係

9月に入って最初の1週間は、関東では例年に比べて涼しい気候が続きました。気候変動の議論では、産業革命以来の気温上昇と極端現象の増加が懸念されています。とりわけ北極での気温上昇は世界のどこよりも速く進行しています。一方で、北米やアジアなど北半球の一部では、過去数十年間にわたり、異常な寒波襲来の頻度が増加しているそうです。実際、2021年2月には、アメリカ中央部のテキサス周辺地域が猛烈な寒波に襲われました。 

2021年9月にScienceで発表された論文は、 北極の温暖化が成層圏の極渦の崩れ(stratospheric polar vortex (SPV) disruption)をもたらすことで、北半球の中緯度地域における極端寒波の襲来につながる可能性を示唆しました。通常、極渦はジェットストリームによって北極海上空にとどまりますが、ジェットストリームが部分的に折れ曲がり、寒気が低緯度にずり落ちてくる現象が起こりやすくなるそうです。   

地球温暖化の最も顕著な兆候の一つは、北極温暖化増幅( Arctic amplification:AA )の加速で、とくに1990年代から顕著になっているそうです。北極温暖化増幅は、北極海氷の減少の結果であり、かつ加速要因です。また、AAは、海氷の減少が北極における湿度を上昇させる結果、ユーラシアなど高緯度地域での降雪増加につながっているとされています。

先日、グリーンランドの氷山山頂にて降雨が観察され、氷床の融解が進んでいることも報告されています。北極は温暖化しやすく、またその影響は、北極圏を超えて、中緯度や低緯度にまで及ぶ可能性が指摘されています。気候変動は不確実性を多く含み、農業への影響を通じて食料安全保障にも影響を及ぼすことから、地球規模で取り組まなければならない課題であることは確実です。

参考文献
Judah Cohen et al, Linking Arctic variability and change with extreme winter weather in the United States, Science (2021). DOI: 10.1126/science.abi9167

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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