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953. 温暖化のもとでも極端な寒波は起こりうる
953. 温暖化のもとでも極端な寒波は起こりうる
2024年1月の日本の気温は全国的に暖かったですが、今週初め、関東も寒気に見舞われ、東京の一部で大雪警報が発令されました。
1月初旬には、フェノスカンジア (スカンジナビア半島、コラ半島、カレリア、およびフィンランドを指す)上空に北極からの大気が流れ込み、フィンランドのエノンテキオで‐44.3℃、オスロで‐31.1℃を記録しました。フェノスカンジアは寒さに慣れているとはいえ、今回のような寒気は近年まれになっており、停電やインフラへのダメージ、脆弱な社会層へのインパクトがありました。
極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、2024年1月初旬に北欧を襲った極端な寒気は、温暖化の下でも起こりうるとしつつ、その頻度が減っていく中、寒波を予期できない社会の脆弱性リスクを高めかねない、と発表しました。
研究者の分析によると、今回のイベントは15年に1度の出来事で、1950年来12番目に寒い記録となる一方、オスロの1日の最低気温は稀で、今日の気候では200年に1度の出来事であったと推定されます。一方、人為的な気候変動の影響がなければ、地域の平均気温はさらに4℃ほど低かっただろうとし、こうした寒気の頻度は5分の1少なくなっているとしました。産業革命前と比較して2℃の温暖化のもとでは、今回のような稀な寒気も2.5℃ほど寒さが和らぎ、頻度も少なくなっていくだろうと予測しています。
研究者らは、気候変動のもとで寒波が全く起きないわけではなく、頻度も激しさも減る分、社会が寒気を予期できなくなっていくことで、甚大な社会的インパクトをもたらしうることに警鐘を鳴らしました。
一方、冬の気象パターンの変化、とりわけ雪不足や雪が解けるタイミングの変化は、灌漑用の農業用水不足につながり、ローカルな食料生産、またそうした地域からの食料輸入に依存する国々の食料安全保障にも大きな影響を及ぼす懸念があります。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)