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454. 北極での温暖化と気候変動

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454. 北極海の温暖化と気候変動

2022年1月6日、関東の平野部では大雪警報が発表され、東京や国際農研のある筑波でも10センチほどの積雪がありました。 予想以上の降雪といえば、昨年2月中旬、アメリカ中西部を襲った寒波が思い出されます。 このときの極端寒波の襲来の原因は、北極成層圏の極渦の崩れ(stratospheric polar vortex (SPV) disruption)の可能性が示唆されました。通常、極渦はジェットストリームによって北極海上空にとどまりますが、北極圏の温暖化によってジェットストリームが部分的に折れ曲がり、寒気が低緯度にずり落ちてくる現象が起こりやすくなるそうです。 

北極海は温暖化が最も顕著に進んでいる地域とされ、その影響は、北極圏を超えて、中緯度や低緯度にまで及ぶ可能性が指摘されています。1月7日にデンマーク北極モニタリングサービスPolar Portalが発表した報告によると、 グリーンランドの氷床が25年連続で純喪失を記録しました。2021年の氷床喪失規模は1990年代であれば比較的低い値とされていましたが、気候変動とともに評価も変化し、異常現象の観察に注目が集まりました。例えば、海抜3200mの山頂で雨が観察され、また過去に融解が停滞していた氷河での融解が加速しました。また夏季の初めの6月はむしろ低温で降雪も多かったものの、7月の熱波で融解が一気に進みました。報告は、夏の初めの氷床での寒く湿った気象が、カナダ南西部・アメリカ北西部に異常な高気圧をもたらしたことに言及しています。 カナダ南西部・アメリカ北西部に50℃近い記録的熱波をもたらした「ヒートドーム」に伴う大気循環現象については、World Weather Attribution は人為的な大気温暖化の結果でしか説明できないと報告しています。  
 
昨年8月に公表されたIPCC気候科学の報告書は、温暖化の進行による夏季の北極海氷床喪失も含めた、 極端現象の増加を予測しており、気候変動対策の緊急性を訴えました。1月5日に発表されたNature誌の論説は、昨年11月のCOP26が世界的に地球温暖化を食い止める努力を政治・ビジネス界に浸透させるモーメンタムになったことを踏まえ、2022年以降はCOP26コミットメントの進展のモニタリングと 気候変動解決策を講じるための研究の重要性に言及しました。論考は、政府の気候変動アジェンダの最重要課題は科学技術とイノベーションにあるとし、11月に開催予定のCOP27でも先進国が低所得国による気候変動緩和・対応への支援を行うメカニズムの重要性が中心的な議論の一つとなるとしています。

国際農研は、開発途上国地域の農林水産業分野でのイノベーションを通じて、地球規模課題に貢献していきます。

(参考文献)

EDITORIAL How researchers can help fight climate change in 2022 and beyond. 05 January 2022.  Nature 601, 7 (2022) doi: https://doi.org/10.1038/d41586-021-03817-4

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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