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353. 気候変動は加速し、かつ強度を増している - IPCC報告書

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353. 気候変動は加速し、かつ強度を増している - IPCC報告書


2021年8月9日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書・第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)が公表されました。 

この報告書は、最も包括的な論文査読に基づいて整理された気候科学に関する最新の知見がまとめられています。2014年に公表された第5次評価報告書の時に比べ、歴史的な温暖化の観測テータセットや人為的な温室効果ガスと気候システムの因果関係を解明する科学的手法が大きく改善し、予測精度が向上しました。これらの分析・手法に基づき、報告書は、近年観察される異常現象の多くが少なくとも過去2000年にわたり前例のないものであり、海面上昇に代表されるいくつかの変化は次の数百年~数千年にわたり不可逆的であると警告しました。


報告書によると、人為的な活動による温室効果ガスの排出が、産業革命期以降の1.1℃気温上昇の原因であることは疑いの余地がないとしています。さらに報告書は、楽観的なシナリオの下でさえ、次の20年内、2040年までに、気温上昇を1.5℃に抑制するとしたパリ協定の目標値を超えてしまうと警告しています。

報告書は世界の全ての地域で気候変動が加速し、1.5℃気温上昇の下で、熱波の頻度の増加や夏季の長期化・冬季の短期化が起こり、2℃気温上昇の下では、異常な熱波が農業や人類の健康の耐えうる限度に達しかねないとしています。例えば、

  • 気候変動は、水の循環に影響を及ぼし、降雨の強度を高めることを通じて、洪水または干ばつの頻度を増加させます。
  • 気候変動は降雨パターンに影響を及ぼし、高緯度地域では降雨が増加する一方、亜熱帯地域の大部分で減少する傾向が予測されています。モンスーン降雨パターンも、地域ごとに大きく変動することが予想されます。
  • 21世紀にわたり、海岸地域では海面上昇が続くとみられ、低地はより頻繁で激しい洪水を経験すると予測されています。かつては100年に一度おきていたような海面上昇の事象が今世紀末までに毎年起こるようになることもありえます。
  • 温暖化の進行によって、永久凍土の融解が加速し、氷山や氷床が解け、夏季に北極海の氷の喪失も起こるでしょう。
  • 温暖化に加え、海洋上の熱波の頻度上昇、海洋の酸性化、酸素レベルの低下などの海洋の変化は、明らかに人為的な影響によるものです。これらの変化は海洋エコシステムに依存する人々の生活に甚大な影響をもたらします。
  • 都市における熱波や豪雨、(海岸に面した都市では)海面上昇の頻度と強度の悪化が予測されます。

農林水産業は、気候変動によって最も影響を受ける部門の一つです。1970年来の地上生物圏の変化は地球温暖化の傾向と一貫しており、北半球・南半球の双方で気候ゾーンが極方向にシフトしています。北半球では、1950年以来、10年ごとに作物の生育期間が平均2日ずつ伸びているそうです。また、土壌水分不足による農業・生態系上の干ばつ(agricultural and ecological droughts)がアジアを除く全地域の一部で頻度と激しさを増すと予想されます。

農林水産業はまた、温室効果ガス、とりわけメタン(CH4 :主に家畜と水田由来)と亜酸化窒素(N2O: 主に窒素肥料使用由来)の排出を通じて気候変動の要因となっています。2019年、大気中の二酸化炭素濃度は過去少なくとも200万年間で最も高くなり、メタンと亜酸化窒素に関しては少なくとも80万年来最も高い濃度となっているとされます。1750年以来、二酸化炭素(47%)とメタン(156%)の濃度上昇は、80万年にわたる数千年の氷期‐間氷期の変化を遥かに上回るものであり、亜酸化窒素(23%)の濃度上昇は過去の変化と似た水準になっています。

温室効果ガス上昇のシナリオの下で、大気中の二酸化炭素蓄積を減速されると期待されている海洋や土地のカーボン吸収能力そのものが弱まることも予測されています。

報告書は、二酸化炭素やメタンを含むその他の温室効果ガス排出を正味ゼロに抑制努力を推進することで気候変動の影響を抑えることは可能としています。ただし、世界の気温を安定化させるには数十年が必要とみられています。

第6次評価報告書では、また、地域レベルでの気候変動の影響評価も示されており、異常気象等の社会・エコシステムへのインパクト予測に基づき、リスク評価や適応・緩和策の意思決定に活用されることが期待されています。1.5℃の気温上昇のもとで、アフリカ・アジア(高い信頼度)、北米(中~高い信頼度)、欧州(中度の信頼度)で、洪水を伴う豪雨の強度と頻度が高まることが予測されています。

このような気候変動加速の見込みに対し、各国・各地域が気候変動への適応・緩和策を講じていかなければならないことは明白です。国際農研は、開発途上国における共同研究を通じ、現場のコンテクストで定着・社会実装につながる持続的農業技術の開発を続けてきました。こうした経験を活かし、地球規模での気候変動対策への貢献を目指しています。

参考文献

IPCC, 2021: Summary for Policymakers. In: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change Cambridge University Press. In Press  https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_SPM.pdf 

環境省. 報道発表資料.気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第I作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について 令和3年8月9日. http://www.env.go.jp/press/109850.html 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)