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356. 異常気象と気候変動 の因果関係

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2021年6-7月にかけ、北米西部における熱波に伴う森林火災や、欧州西部や中国での洪水など、北半球の様々な地域で極端現象が報道されました。 8月に入り、南ヨーロッパでは猛烈な熱波で山火事が多発していましたが、昨日のニュースにてイタリアでは欧州観測史上最高記録の48.8℃を記録したと報道されました。日本でも、来週前半にかけて記録的な大雨が予測されています。

8月9日に公表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書・第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)によると、今後気候変動の加速により、熱波や豪雨、干ばつや洪水等の極端現象の頻度がより高まっていくことが予測されています。

IPCC報告書は、気候システムの因果関係を解明する最新の気候科学科に基づいています。ある事象の原因を特定する研究は「アトリビューション研究」‘Attribution Studies’と呼ばれます。極端現象と気候変動の因果関係を分析するアトリビューション研究においては、「極端気象の程度・頻度等は、気候変動によってどの程度変化するか」という問いをたて、様々な気象・気候観測データと地球気候シミュレーションモデルを用い、温室効果ガス等の人為的活動を考慮したシナリオと考慮しないシナリオの比較分析を行うそうです。 このような分析はかつて時間がかかるものでしたが、最近では極端現象の数週間後には気候変動へのアトリビューションも可能になっているといいます。

例えば、気候システム原因特定を目指すプロジェクトの27名の研究者らが、6月に北米西部を襲った熱波に関して早急に解析を行った結果、当地域で50 ℃近くに及ぶ熱波の起こる確率は、19世紀末に比べ150倍上昇したと指摘しました。言い換えると、研究者らは、この熱波は人為的な気候変動なしに不可能な現象であったと結論したことになります。 

気候変動と極端現象の因果関係について迅速に分析が可能となった背景について、気候科学者らは、気候変動モデルや統計解析手法の向上のみならず、実際に極端現象が発生する頻度が増していることを挙げています。

 

参考文献

Diagnosing Earth: the science behind the IPCC’s upcoming climate report. Jeff Tollefson. Nature  https://www.nature.com/articles/d41586-021-02150-0 

Climate change made North America’s deadly heatwave 150 times more likely. Quirin Schiermeier. Nature  https://www.nature.com/articles/d41586-021-01869-0

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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