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339. 2021年6-7月、北半球で観察される極端気象現象

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2021年、関東地方では例年より遅く梅雨入りし、例年より早い梅雨明けとなりました。世界に目を向けると、この6-7月、北半球の各地域で極端な異常気象が観察されています。

太平洋を挟んだ米国北西部・カナダ西部は、6月末から熱波に襲われ、40℃を超える史上最高気温を更新しています。カナダ・ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー北西部に位置する村、Lyttonでは、6月27日に46.6℃を記録、24時間内の28日に47.9℃、 さらに29日は49.6℃と3日連続で最高気温を更新し、7月1日には村は山火事に囲まれました。 Lyttonはロッキー山脈を抱えるにもかかわらず、中東のような気象状況に置かれ、氷河の溶解が懸念されています。米ワシントン州やオレゴン州も熱波に覆われ、シアトルやポートランドでは連日40℃を超す気温に見舞われました。Copernicus Sentinel-3 missionによる衛生画像によると、ワシントン州内陸部では、69℃を記録した地点もあると報告されています。 7月に入っても米国北西部・カナダ地域では熱波が続き、山火事の拡大が報道されています。こうした熱波は大気中の高気圧が停滞し蓋のように地上熱を閉じ込める「ヒートドーム」現象によるとされ、今年は中東でも平年の1か月前に熱波の到達が観察されています。 

一方、欧州では7月に入り、ドイツ西部やベルギーの地域を中心に、100年に1度と言われる豪雨による洪水が人的・物的被害をもたらしています。7月14-15日の二日間に平年の2か月分に相当する雨量によって土壌が飽和状態に達したとされ、土砂を伴う大洪水の甚大な被害が週末にかけて次々に報告されているところです。 

極端気象の直接の原因については分析が待たれますが、専門家は気候変動の影響の可能性を指摘しています。既に、産業革命以前にくらべ、地球の平均気温は1.2℃上昇しているとされています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃報告書」は、人類の厚生を維持する上で、パリ協定が目標とする温暖化を産業革命期に比較して2℃以下に抑える目標よりも、野心的に1.5℃にとどめなければ、気候変動の健康・生活・食料安全保障・水供給・経済成長へのリスクは上昇しうる、と懸念を表明しています。


2021年は、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)や国連食料システムサミットなどの多くの国際的イニシアチブが予定されており、干ばつ・洪水・嵐といった異常気象の頻発に代表される最悪のインパクトを回避するために各国が気候変動のアクションのコミットメントをとれるかどうかの成否を分ける年とされています。

2021年5月12日、農林水産省は食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。 戦略では、食料・農林水産業の脱炭素化、化学農薬・化学肥料の低減等の環境負荷軽減に取り組むことで、SDGsモデルの達成や、グリーン社会の実現に注力し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すこととしています。 国際農研も、生産力向上と持続性の両立を可能にするフードシステム変換という地球規模の課題の解決に対し、科学技術を通じて貢献することを目指しています。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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