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770. 脆弱な地域における極端気象のインパクト

 

770. 脆弱な地域における極端気象のインパクト

今週、日本はゴールデンウィーク、期間中の天気については、平年並みか暖かく、夏日が予想されている地域もあるそうです。

 

気候変動により、極端ともいえる現象も世界各地で頻発化しています。

極端な熱波の頻度が増加することで人命が危機にさらされるケースが増えていることを踏まえ、4月25日にNature Communications誌で発表された論文は、これまで極端な気温を経験したことのない地域ほど、いざリスクに晒されたときに脆弱となりうることを示しました。観測史上極端な高温が報告されたのは分析対象とした世界の地域の31%に過ぎませんが、気候モデルは同様なケースがどんな地域でも起こりうることを示唆しています。歴史的に熱波の確率年(発生頻度)が80年以上でありながら急激な人口増が見込まれているアフガニスタンや、これまで異常な熱波を殆ど経験していない中央アメリカ、ロシア東部といった地域では、異常な熱波に晒された場合、ヘルスケアやエネルギーインフラの不備によって、とりわけ大きな被害が予測されます。一方、中国の北京等の複数の地域や、ドイツ、オランダ、ベルギーも熱波に晒される人口規模では際立っていますが、先進国ゆえに緩和対策を講じるキャパシティによって人的被害を抑制することが期待されます。

 

極端気象のうち、干ばつは、天水農業・遊牧に依存する人々の食料安全保障・健康・所得に影響を及ぼします。実際、エチオピア南部・ソマリア南部・ケニア東部にまたがる「アフリカの角」地域の南部は、2020年以来、連続して小雨季・大雨季と平均を下回る雨量による干ばつが続き、400万人以上が急性の飢餓に陥る人道危機に直面しています。極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionが4月27日に発表した情報によると、 大雨季における平均をはるかに下回る低降雨量は、気候変動によって起こる可能性が2倍高まる一方、大雨季と小雨季を合わせるとラニーニャの影響を受けてか、気候変動の影響は明らかでないことを示唆しました。 

 

脆弱な地域ほど、十分な適応策を講じられるか見直す必要に迫られています。

 

(参考文献)
Thompson, V., Mitchell, D., Hegerl, G.C. et al. The most at-risk regions in the world for high-impact heatwaves. Nat Commun 14, 2152 (2023). https://doi.org/10.1038/s41467-023-37554-1

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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