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366. 最も脆弱な地域においてこそ、強靭なフードシステムへの投資が極めて重要である

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366. 最も脆弱な地域においてこそ、強靭なフードシステムへの投資が極めて重要である

2021年8月、Nature Food誌にて、最も脆弱な地域においてこそ、強靭なフードシステムへの投資が極めて重要であるとの論考が発表されました。 食料安全保障の危機が高まっている状況を反転させるには、脆弱な地域を意図的に対象とし、公正で持続的で健康なフードシステムへの転換が要求されています。その内容を紹介します。

世界の食料栄養問題は数十年にわたり改善してきましたが、近年再び上昇傾向にあります。最大の原因は既に食料安全保障に課題を抱える地域における気候ショックと紛争の二重の負荷ですが、COVID-19危機がさらに状況を悪化させています。世界的な気候・持続目標ターゲットを達成しながらプラネタリーバウンダリーのもとで食料栄養危機を反転させるには、グローバルフードシステムの抜本的な転換が必要とされます。一方で、脆弱な社会のコンテクストにおける必要性や方法について、十分議論されているとは言えません。

フードシステムの転換は、2つの理由から、最も脆弱な地域の課題とニーズに向き合う必要があります。まず一つ目は、これらの地域において食料危機が最も深刻であること。現地の人々の多くはローカルなフードシステムに依存しており、気候ショックや紛争にさらされ、変化への適応力も喪失していることが多く、これらの地域を無視することで社会不正義と環境圧力によってさらなる食料危機・紛争・暴力・強制移住が悪化しかねません。二つ目は、世界の最も重要なカーボン吸収源や生物多様性ホットスポットがこうした地域に位置しており、それらの保護は自然生態系ガバナンスに依存していますが、既に多くの課題を抱え制度的キャパシティにかける国々にとって負担になっています。

長期的に世界の食料安全保障を維持するには、気候変動対応・生物多様性のターゲットも達成する必要があります。そのためには、農地の拡大を止め、既存の生産システムにおける持続性と生産性を向上し、劣化した土壌を回復する必要があります。

脆弱な状況において実現するには、システマチックな持続的農業集約化とともに、農業―生業の統合的なアプローチへの投資が必要となります。現場における総合的土壌・水管理システム、ウォーターハーベスト、保全耕起、総合的な流域・ランドスケープ管理計画などを通じ、生産性を向上させつつ、システムレベルでの多様性を維持し、負の環境外部性を削減しながら農民の負担を削減することが可能です。小規模農業はこうした戦略の中心であるべきです。持続的な農業集約化は、飼料用樹種を活用するアグロフォレストリーにより畜産システムにも活用することで、食料生産当たりメタン排出を削減しながら同時に炭素固定にも貢献することもできます。畜産の持続的集約化は、とりわけ家畜が重要な資産でありかつ食料源である脆弱な地域において重要な意義を持ちます。世界的にみれば持続的なフードシステムへの転換は、植物ベースの食生活へのシフトを要請しますが、既に食料危機の状況にある脆弱な地域では逆効果をもたらす可能性があります。このような場合、持続可能な家畜生産は、食料安全保障と持続性の二つのゴールを達成しうる方法の一つといえます。

国連食料システムサミットが近づくにつれ、持続的なだけでなく公正が担保されるフードシステム転換のためのアプローチが保証されるかどうかについて関心が高まっています。グローバルフードシステムのゴールを達成するには、「万能薬はなく no-one-size fits it all」、包括的で現場のコンテストごとのアプローチが極めて重要になります。

参考文献

Queiroz, C., Norström, A.V., Downing, A. et al. Investment in resilient food systems in the most vulnerable and fragile regions is critical. Nat Food 2, 546–551 (2021). https://doi.org/10.1038/s43016-021-00345-2

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)