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105. 世界経済フォーラム COVID-19不況に対抗するには、フードシステムに投資せよ

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世界経済フォーラム(World Economic Forum)にて、国連食糧農業機関(FAO)と欧州復興開発銀行(EBRD)は、「世界経済フォーラム COVID-19不況に対抗するには、フードシステムに投資せよ To counter the COVID-19 recession, we need to invest in food systems.」との論考を発表しました。

危機の発生時、多くの国がモノや人の移動規制を課すことでフードサプライチェーンに緊張が走り、食料へのアクセス確保が課題として浮上しました。さらにフードサプライへの不確実性への懸念から、国内事情を優先した保護主義措置の一環として、食料輸出の規制に乗り出した国もありました。幸いにも、過度の保護主義回避され、最初の規制も徐々に解除されています。FAOやEBRDは各国に過剰な規制をとらないよう求め、また、食料備蓄・生産水準に関するタイムリーな情報・データの提供も、危機回避に大きく貢献しました。

今回、過剰な保護主義を回避できたことは取り合えずよかったとして、経済を刺激し、フードサプライチェーンを強靭化するには十分とは言えません。それでは、何が期待されているのでしょうか。

第一に、とりわけ地中海南部・東部、サブサハラアフリカ、中央アジアといった地域における国々は、農業市場の地域統合を通じてフードシステムの強靭性を高めるべきです。このような統合は輸出・輸入市場の多様化と高付加価値化機会の創出につながります。欧州等向け輸出需要の落ち込みに直面するアフリカにおいては、貿易規制の撤廃はとりわけ重要です。アフリカ大陸自由貿易協定は中心的な役割を果たします。しかし、そのためには、地域貿易の最大の障壁となっている非関税障壁の撤廃を進めていかなければなりません。例えばナイジェリアは大陸全体への肥料生産能力がありますが、非関税障壁のために他のアフリカ諸国への輸送が不可能になっている結果、多くはラテンアメリカに輸送されています。中央アジアでは、国々はそれぞれのペースで市場開放に移行していますが、進展は遅いといわざるをえません。

第二に、食料の安全が保障されなければ人々の健康は期待できず、安全でない食品は国際市場で取引できません。食中毒は食料・動物・人々の移動とともに拡散します。アフリカにおいて食の安全基準を確立する必要があり、そのことで域内地域貿易を振興することが期待されます。

第三に、将来またグローバル食料貿易が寸断された場合に備え、国々の強靭性強化に投資することで、持続性を高め、カーボン排出の削減にもつながります。国境封鎖や国内流通の規制で、果物・野菜・肉・乳製品などの大量の生鮮食品が無駄となり、莫大なコストを伴いました。同時に、輸送コストの上昇により多くの途上国が輸出できない状況に陥りました。より地域レベルで多様化された生産・供給を行う強靭で持続的な地域レベルのフードシステムへの転換を加速すべきです。デジタル農業ソリューションは解決策の一つです。

 

参考文献

World Economic Forum. To counter the COVID-19 recession, we need to invest in food systems. 31 Jul 2020, Máximo Torero/FAO, Beata Javorcik/EBRD. https://www.weforum.org/agenda/2020/07/how-we-can-build-more-resilient-…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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