Pick Up

167. COVID-19とグローバル・フードシステム

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が中国の武漢にて最初に確認された2019年の年末から、早一年が経とうとしています。以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、過去に例を見ない潜伏性の高さから、ヒトの移動と経済活動に伴い、グローバル化の進んだ現代社会で感染を急速に拡大してきました。感染防止対策疲れによって各国が経済再開に踏み出す中、10月に入ると欧州や米国で第一波を上回る感染者数の増加が報告されるようになり、WHOは、10月24日、北半球でCOVID-19の状況が再び重大な岐路に直面するとの声明を発表しました。11月初頭時点でロックダウンの再開に踏み切る国もあり、未だ収束する気配は見えません。

COVID-19による保健・経済危機の衝撃は世界中を席巻し、保健・教育・所得の三側面に打撃を与えることで、人間開発の危機をもたらしています 。パンデミックはとりわけ社会保険制度へのアクセスが限られている脆弱な社会層に大きな衝撃を与え、貧困と格差を急拡大させており、「飢餓のパンデミック」も懸念されています。

COVID-19パンデミックを機に世界的な食料安全保障への懸念も高まり、リスク伝播のチャネルとしてのグローバル・フードシステムが着目されるようになりました。フードシステムとは、Eatランセット委員会によると、「食料の生産、加工、流通、調理、消費に関連するすべての要素と活動」と定義されます。COVID-19のフードシステムへの影響を論じる上で、特に着目されているのが、流通、消費、生産、です。

まず、COVID-19を契機として浮上した懸念は、移動規制等が生産と消費を結ぶ流通を分断することで生じるフードサプライチェーンへの影響でした。COVID-19危機に関しては、国際機関が穀物備蓄・生産見通しに関する情報提供と国際協調の呼びかけを迅速に行ったことも功を奏して、今のところ世界穀物市場レベルでの危機は回避されているようです。にもかかわらず、COVID-19はグローバル・フードサプライチェーンの流通面における潜在的な脆弱性を浮かび上がらせる契機となりました。

他方、COVID-19は、グローバル・フードシステムの消費・生産の双方にまたがる、より構造的で根の深い問題を露呈することになりました。現在のグローバル・フードシステムにおいては、バランスの悪い食生活のために、免疫が低下し、栄養状態に問題を抱えた人々ほど新型コロナウイルスの犠牲になっていることが報告されています。フードシステムは、健康な食生活に欠かせない食料を入手可能な価格で十分に生産できないばかりか、その食生活を支える生産過程で、大量の温室効果ガスを排出し、土壌・水・大気・生物多様性の劣化を伴っています。

言い換えると、グローバル化された国際社会において、現状のフードシステムは、人間の健康と地球システムの持続性の双方を損ねることで、現在われわれが直面している気候危機と環境劣化の深刻化・食料栄養安全保障の破綻・パンデミック・世界経済不況という複合的な危機の原因を自ら作り出しています。これら課題の展開は、極めて速く、密接に関連し合い、我々の生活・地球のあらゆる側面に影響を及ぼしています。国際社会は、栄養に優れた多様な食生活と地球システムの持続性維持の両立を可能にするフードシステムの転換に向け、農業研究開発の連携に早急に取り組む必要があります。

国際農研は、世界食料栄養安全保障に関わる情報を体系的に収集し、戦略的に提供することをミッションの一つとしています。令和2年11月10日(火)に、ウェビナー形式にて、創立50周年記念を記念し、COVID-19とグローバルフードシステムをテーマにしたシンポジウムを開催します。

 

JIRCAS創立50周年記念国際シンポジウム2020

「ポスト・コロナ時代のグローバル・フードシステムをとりまく地球規模課題の展開と農林水産業研究における国際連携の役割」

https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2020/e20201110

 

登録サイトはこちら。締め切りは本日11月4日(水)17:00 です。シンポ参加にご関心があり、ご登録がまだの方は、ぜひ以下のリンクにアクセスをお願いいたします。

https://www.jircas.go.jp/ja/form/intlsymp2020 

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)