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170. グローバル・フードシステム由来の温室効果ガス排出 

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世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑えることを目指すパリ協定の目標を達成するには、国際社会は農業由来のものを含む温室効果ガス排出量を大幅に削減する必要があります。Scienceに掲載された論文は、化石燃料からの温室効果ガス排出が大幅に削減されたとしても、グローバル・フードシステム由来の排出を削減しなければ1.5℃目標はおろか、2℃目標の達成も困難であり、パリ協定目標達成のためには食料生産の在り方の転換に真剣に取り組む必要性を訴えました。

論文では、(i)植物性食品に富んだ食生活の世界的な採択、(ii)一人当たりカロリー消費を健康的な水準に維持する世界的な調整、(iii)イールドギャップ*の解消と品種改良・栽培管理法向上を通じた持続的な収量向上、(iv)フードロス・食品廃棄物の50%削減、(v)経営レジームの転換(肥料等の精密利用など)や技術革新(反芻動物飼料への添加物)を通じた食料由来の温室効果ガス排出の削減、といった戦略に関するシナリオ分析を行っています。

 

国際農研は、11月10日(火)にウェビナー形式で、国際シンポジウムを開催し、グローバル・フードシステムにおける気候変動緩和技術の重要性についても取り上げます。

https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2020/e20201110

(登録は11月4日(水)で締め切りました。ご登録ありがとうございました。お問い合わせにつきましては、以下にお願いいたします。)

国際農研 企画連携部 情報広報室 URL: https://www.jircas.go.jp/ja/form/inquiry

 

*イールドギャップ - 最適な品種・栽培管理法を採択した場合を想定した収量、に対し、農家環境などで実際に観察される収量、との差・乖離を指し、農業技術・栽培方法の改良を通じて収量向上改善の余地があることを意味する。

 

参考文献

M.A. Clark el al., "Global food system emissions could preclude achieving the 1.5° and 2°C climate change targets," Science (2020). https://science.sciencemag.org/content/370/6517/705

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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