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206. 国・セクター別の温室効果ガス排出

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情報収集分析

2020年12月までに、189か国がパリ協定に賛同し、温室効果ガス排出の削減にコミットしています。これらの国で世界の温室効果ガス排出の81%を占めますが、新政権のもとでアメリカが加われば93%となります。アメリカ、日本、カナダ、ドイツ、メキシコを含む19か国が、経済の脱炭素化に向けて長期的な戦略を練っています。

世界資源研究所(World Resource Institute)は、国・セクター別の温室効果ガス排出の比較などが可能なインターアクティブ・チャートを公表しています。そのデータによると、世界の3大排出国・地域である中国・アメリカ・EUだけで世界の温室効果ガス排出の41.5%を占める一方、世界の低排出国100か国の占める割合は3.6%に過ぎません。全体として、第6位の日本を含むトップ10排出国が世界のGHG排出量の3分の2を占めており、気候変動対策のカギを担っています。

電気・運輸・製造業・建物・その他化石燃料を含むエネルギー部門は、全体の排出量の73%と最大の温室効果ガス排出セクターであり、1990年から56%上昇しましたが、2013年以来その上昇率は少しずつ緩やかになっています。土地利用変化・森林部門からの排出(第3位)は毎年変動するものの相対的に高水準に留まっています。その一方で、1990年以来、農業部門(第二位、12%上昇)、産業部門(第4位、180%上昇)、など排出量が増加し続けているセクターもあります。最悪の気候変動を回避するには、全セクターでの上昇トレンドを反転させ、2050年までに純ゼロ排出を達成する必要があります。

日本だけをみると農業由来の温室効果ガス排出は少ないように見えます。他方、日本はカロリーベースで6割の食料(主にとうもろこしと小麦、とうもろこしは家畜飼料)を海外に依存しています。 日本では高齢化が進んでいきますが、2050年までに世界人口は約20億人増えて97憶人に達するとされ、その増加の多くは開発途上国でおこると予測されています。これら開発途上国には純食料輸入国も多く、気候変動の影響でさらに農業生産が不安定化しています。よって、国際貿易にカロリーベースでの食料供給を依存する日本にとっても、国際的な食料栄養安全保障の維持と気候変動緩和・適応への国際協力への参画・リーダーシップが求められています。 

 

参考文献

World Resource Institute. This Interactive Chart Shows Changes in the World's Top 10 Emitters by Johannes Friedrich Johannes Friedrich, Mengpin Ge and Andrew Pickens - December 10, 2020 https://www.wri.org/blog/2020/12/interactive-chart-top-emitters

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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