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851. アフリカの脆弱国家は気候変動の最大の犠牲者である

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851. アフリカの脆弱国家は気候変動の最大の犠牲者である

気候変動はアフリカに極めて深刻な脅威をもたらしていますが、とりわけ脆弱で紛争状態にある国々において深刻な影響を及ぼしています。中央アフリカからソマリア、スーダンにいたるまで、温室効果ガス排出に最も寄与していないアフリカ諸国ほど、洪水・干ばつ・そのほか気候変動関連のショックを被っています。

8月30日、国際通貨基金(IMF)は、9月4-8日にケニアで開催されるアフリカ気候サミットを機に、アフリカの脆弱な国家は気候変動の最大の犠牲者であるとの報告書を発表、国際社会がこれらの国々が極端気象に適応する支援をしなければ、より破滅的な状況をもたらしうると警鐘を鳴らしました。

報告書によると、他の国々と比べ、毎年、脆弱な国家において、3倍以上の人々が自然災害の被害を受け、人口比で2倍以上の意図人が移住を余儀なくされています。脆弱国家では地理的な要因もあって、2040年までに平均35℃以上となる日が年間61日間と、そのほかの国よりも4倍多くなることが予測されています。熱波および熱波に伴う異常気象は、農業や建設セクターといった基幹産業での人の健康を危険にさらし、生産性を損ね雇用を脅かします。

IMFの報告書は、実際に気候変動は脆弱国家においてマクロ経済上の問題を長引かせることを示唆しました。極端気象から3年後の脆弱国家におけるGDPの損失は4%に及び、他の国々のGDP損失1%よりもずっと高い値となります。脆弱な国家における干ばつは、一人当たりGDPを0.2%ほど押し下げる傾向があり、その他の国々よりも所得がさらに伸び悩むことを意味します。

脆弱な国家における気候変動の影響がより深刻な理由は、地球で最も暑い地域に位置しているという地理的な条件だけでなく、武力衝突、天水農業、リスク管理能力不足、のせいでもあります。気候ショックは、これらの国家の脆弱性の本質的な原因となっている武力衝突や飢餓を悪化させ、経済や人々の厚生の状況をさらに悪化させます。

IMFの推計によると、GHG排出量が高水準のシナリオの下では、他の条件を一定として、人口当たり武力衝突の犠牲者は、脆弱国家で2060年までに10%近く上昇すると推計されています。気候変動は2050年までに脆弱国家において飢えに苦しむ人々を5000万人増やすことが予測されています。また、気候変動による多大な損失は、脆弱国家が天水農業に依存していることにもあります。脆弱国家において、農業は経済全体の4分の1を占めますが、灌漑面積は全耕作地の3%以下になっています。天水農業はとりわけ干ばつや洪水に脆弱である一方、灌漑インフラは存在したとしてもしばし適切に設計されておらず、機能不全に陥ったままになったり、武力衝突により破壊されています。

こうした国々の政策策定者は、気候ショックに早急に対応する社会的なセーフティーネットの強化や、壊滅的な状況からの回復に資金注入するための保険スキームなどの政策介入を実施することが必要です。より長期的には、気候変動に強靭なインフラ投資など気候変動への強靭性・適応能力を高めるための政策実施が必要で、そのための国際的な支援が求められています。

 

(参考文献)
Laura Jaramillo et al. (2023) Climate Challenges in Fragile and Conflict-Affected States
https://www.imf.org/en/Publications/staff-climate-notes/Issues/2023/08/…


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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