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517. サブサハラ・アフリカ農業生産性の向上は今世紀の最大の課題の一つである

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517. サブサハラ・アフリカ農業生産性の向上は今世紀の最大の課題の一つである

様々な世界の事象を統計ダッシュボードによって可視化を試みるオンラインサイトのOur World in Dataは、世界の食料栄養農業問題についても、常にデータを更新し、ときに特集ページを開設しています。今回は、サブサハラ・アフリカ(SSA)における農業生産性問題に関するトピックを紹介します。

農業には土地と労働投入が必要です。労働生産性が低いと、農家は教育やヘルスケアを受けることができず、また、農業以外の職業に子供を就かせることも難しくなります。また、森林破壊を回避し、生物多様性を保全する上でも、限られた土地で食料生産を行うことが必要となります。トピック作成者は、世界の他地域に比べ、SSA農業が土地・労働生産性の低さで際立っていることをデータで示し、SSA農業生産性の向上が飢餓・貧困・生物多様性の破壊の解消にとって不可欠であり、ゆえに今世紀の最大の課題の一つであると主張しています。

まず、SSAの労働生産性、あるいは労働者あたりの付加価値は、世界平均の半分以下であり、最も生産性の高い国々の50分の1以下にとどまっています。 SSA地域内でも格差があり、域内平均の半分以下の労働生産性の国も報告されています。多くが小規模農家であり、労働生産性が改善されない状況では農家が貧困から抜け出すことは困難であり、他の産業の発展も見込めません。

土地生産性に関しても、その他の地域に比べ、低水準にとどまっています。アフリカの平均収量はインドの半分で、アメリカの5分の1にとどまっています。低い土地生産性ゆえ、食料増産は主に農地面積の拡大で達成され、その結果、森林破壊や生態系の喪失を伴ってきました。過去30年間、インドでは生産が133%拡大し、その殆どが土地当たり収量向上で達成され、農地拡大は殆どありませんでした。しかしSSAでは3倍に増えた生産のうち、収量からの貢献は30%にすぎず、ほとんどの食料増産は耕地面積拡大によるものでした。今後、収量の向上がなければ、SSAは農地拡大を必要とし、自然生態系の喪失が不可避であると見込まれています。

この記事の作成者は、昔は欧州諸国も農業低生産性に悩まされていたが、改良種子・肥料・機械・灌漑などの投入のおかげで4倍もの収量向上を達成したことに言及し、SSAでも農業生産性改善は不可能ではないとします。

他方、生産性向上と環境負荷削減の両方を達成するには、アフリカ小規模農業システムの現場ごとの課題に向き合い、様々なイノベーションを試行しながら取り組んでいく必要があります。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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