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605. サブサハラ・アフリカにおける農業生産性改善の課題

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605. サブサハラ・アフリカにおける農業生産性改善の課題

明日27日・明後日28日は、いよいよTICAD8会議が開催されます。アフリカ開発のアジェンダは農業だけに限りませんが、農村および都市で栄養ある食料を供給し、経済構造転換を促進するうえで、農業生産性の向上は不可欠です。

今回は、アフリカ農業研究の第一人者であるThomas Jayneミシガン州立大学教授・Pedro Sanchezフロリダ大学教授が、昨年Science誌で発表された論文を参考に、サブサハラ・アフリカ農業の最大の課題である農業生産性向上の課題について紹介します。 

論文によると、アフリカでは2000年以降、農業生産は大幅に拡大してきました。しかし、その拡大の75%は作物生産面積の拡大によるもので、作物生産性の向上の寄与は25%程度にすぎませんでした。サブサハラ・アフリカにおける穀物の生産性は1980年から2018年の38年間に38%上昇しましたが、南アジア・東南アジアの半分程度に過ぎませんでした。

農業生産を拡大するうえで、作付面積の拡大によることなく、既存の農地での持続的な生産性の向上が必要である理由は幾つかあります。

まず、ほとんどの小規模農家の耕地面積は過去数十年間の間に縮小しています。大陸全体では、サブサハラ・アフリカは世界に残る可耕地面積の52%を占めるとされますが、これらの土地はわずか8つの国に集中し、残りの41か国では多くの農村人口が小さな地域に集中しています。年間降水量が400mmを超えるサブサハラ・アフリカの可耕地において、比較的条件のよい20%の土地が74%の農村人口を抱えています。多くの農村の若年人口が相続できる土地も少なくなってきています。よって、サブサハラ・アフリカ全体では土地があるように見えたとしても、多くの農村人口は実際に土地不足に直面しており、地価上昇も観察される中、アフリカ農村にとって既存の土地の生産性を向上することが必然的に重要になってきます。

また、農業拡大のために耕地拡大に頼ることは、生物多様性・自然植生の保護、環境保全の点からも好ましくありません。アフリカの増える人口を扶養しながら地球の貴重な自然を保護する上で、既存の土地における生産性向上が重要なのです。

農業の生産性向上には、テクノロジーが必要です。改良種子の導入および化学肥料・有機物の施用が、アフリカ農業の生産性向上の前提条件となります。しかし、一般にアフリカの土壌は栄養素に乏しく、作物の収穫後に十分な無機・有機肥料が補充されない結果、土壌肥沃度の劣化という悪循環が起こっています。

サブサハラ・アフリカにおける化学肥料施肥量は、2006年時点でヘクタール当たり平均8㎏でした。2018年にこの値は17.9㎏となっていますが、収穫された作物の持ち出した養分を補充するには十分ではありません。現地毎の土壌・作物条件に応じて、作物の肥料利用効率性および施肥の方法、双方の向上が必要とされます。とくに農家との双方向の情報交換を可能とする普及システムが重要で、肥料を取り扱う企業・研究機関の密接な連携も必要となります。

 

 

来週30日に予定されている国際農研主催のTICAD8公式サイドイベントでは、上述の論文も提起した課題にこたえるため、アフリカ開発における農業生産性向上のための農学の役割について議論されます。

「アフリカ農学と土壌肥沃度・貧栄養土壌管理の課題」
日時:2022年8月30日(火) 17:00~19:00(日本時間)
主催:国際農林水産業研究センター(国際農研;JIRCAS)
後援:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、独立行政法人 国際協力機構(JICA)
日: https://www.jircas.go.jp/ja/event/2022/e20220830
英: https://www.jircas.go.jp/en/event/2022/e20220830


(参考文献)
Jayne TS, Sanchez PA. 2021. Agricultural productivity must improve in sub-Saharan Africa. The region must pivot from area expansion to increasing crop yields on existing farmland
SCIENCE. 4 Jun 2021. Vol 372, Issue 6546. pp. 1045-1047. DOI: 10.1126/science.abf5413


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)