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565. FAO- ITUによる報告書「サブサハラ・アフリカのデジタル農業の現状」

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565. FAO- ITUによる報告書「サブサハラ・アフリカのデジタル農業の現状」

サブサハラ・アフリカは、4億人以上の人々を極度の貧困から救い、約2億5000万人の零細農家と牧畜民の生活を改善するために、現在の農業生産性を大幅に向上させる必要があります。そのためには、インフラの改善、農業分野におけるデジタル技術へのアクセス・利用の拡大を通じたデジタル変革が必要です。サブサハラ・アフリカのデジタル農業の現状を理解するため、国連食糧農業機関(FAO)と国際電気通信連合(ITU)は、47カ国で本調査を実施しました。

本報告書では、6つのテーマ別重点分野に対する47か国のケーススタディーで構成されており、国別の分析から得られた主な知見を、今後のアクションのための提案とともに紹介しています。この研究結果は、サブサハラ・アフリカにおける農業分野のデジタル変革への投資を促進・支援する目的で、FAOやITU加盟国、そしてすべての関連ステークホルダーに提示されます。

本報告書では、キーメッセージとして以下を挙げています。

  • サブサハラ・アフリカ諸国の農業DXはさまざまな段階にあり、それぞれの段階において知恵、知識、教訓を共有し、お互いが学び合う環境が整いつつありますが、包括的で協同的に進める必要があり、誰一人取り残してはいけません。
  • 農業DXを牽引するための、地方のインフラ整備、資金調達、研究や技術開発への投資、農業におけるイノベーションや起業化が不十分です。
  • 大半の国において、投資を受けるビジネス環境の整備に課題を抱えており、中でも特にスタートアップの誘致に苦戦しています。
  • サブサハラ・アフリカには複数の海底ケーブルが整備されています。沿岸国と内陸国の両方のブロードバンド接続を改善のためにまずこれら海底ケーブルを使った通信接続を優先する必要があります。
  • デジタルスキルの未熟な人々にも確実に届く、カスタマイズされた能力開発プログラムによって、農業DXを推進すべきです。
  • 情報通信技術(ICT)やデジタル経済は既存の農業政策と整合しておらず、農業のデジタル化推進の妨げになることがあります。国からの農業のDXを後押するよう国家戦略の見直が求められます。
  • デジタル化はバリューチェーン全体に働くことが求められます。政府としてデジタル技術を駆使した包括的なアグリフードシステムの育成・推進を支援することが必要です。
  • 農業分野に包括的で持続的なデジタル環境を整備するには、国家間、国際機関、民間企業の連携が必須です。


また、本報告書の国別のケーススタディーの例として、マダガスカルで国際農研が実施する「FyVaryプロジェクト(肥沃度センシング技術と養分欠乏耐性系統の開発を統合したアフリカ稲作における養分利用効率の飛躍的向上プロジェクト)」が紹介されています(報告書183ページ)。

(参考)
Status of digital agriculture in 47 sub-Saharan African countries
https://www.fao.org/documents/card/en/c/cb7943en/

FY VARYプロジェクト
https://www.jircas.go.jp/ja/satreps

(文責:情報広報室 金森 紀仁、生産環境・畜産領域 辻本泰弘、情報プログラム 飯山 みゆき)

 

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