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1011. サブサハラ・アフリカにおける気候変動にレジリエントな伝統食用作物の潜在性
1011. サブサハラ・アフリカにおける気候変動にレジリエントな伝統食用作物の潜在性
気候変動の進行につれ、サブサハラ・アフリカにおいて主食作物の生産性は大きな影響を受けることが予測されています。気候変動に対してレジリエントな食用作物遺伝資源や、栄養に富みつつも無視され十分に活用されてこなかった植物種(Neglected and Underutilised Plant Species : NUS)を活用した作付体系の多様化への期待が高まっています。先日、PNAS誌の2023 Cozzarelli Prizeを受賞したWorld Vegetable Center研究者らの論文は、サブサハラ・アフリカにおいてNUSを活用した食料生産の多様化が、気候レジリエンスと栄養状態を向上する可能性を示しました。
論文著者らは、気候ニッチモデルを使い、サブサハラ・アフリカにおいて作付体系の多様化を通じ主食作物を補完しうる伝統的な食用作物138種の潜在性を推計しました。解析は、気候変動により、2070年までにサブサハラ・アフリカの約10%の地域で主食作物の生産が困難になると予測される一方、主食作物との作付体系に導入することで重要な微量栄養素を補完しうる58の伝統作物を同定しました。論文は、主食作物にくらべ、これまでNUSへの研究投資がほとんど行われてこなかったとし、サブサハラ・アフリカの気候レジリエンスと栄養状態改善に貢献しうるNUS研究の重要性を説きました。
(参考文献)
Maarten van Zonneveld et al. 2023. Forgotten food crops in sub-Saharan Africa for healthy diets in a changing climate. March 27, 2023, 120 (14) e2205794120 https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2205794120
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)