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1254. 気候変動に伴い、若い世代が極端現象に晒される確率が大幅に高まる

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1254. 気候変動に伴い、若い世代が極端現象に晒される確率が大幅に高まる

 

人為的な気候変動により、極端現象は激化しています。社会に有害な影響を及ぼす気候の極端な変動は、気候変動に関する最大の懸念事項です。気候変動への人為的影響は、熱波、河川の洪水、干ばつ、農作物の不作、山火事や熱帯低気圧、といった極端現象にも確認されています。温暖化が続くと、これらの現象の強度、頻度、期間がさらに増加すると予測されています。現在の政策のもとでは、今世紀末までに世界平均気温が産業革命以前の水準より+2.7°C(+2.2~3.4°C)上昇する可能性が高いとされています。

気候の極端な事象は、現在の若い世代の生涯を通じて最も頻繁に発生すると予測されており、人が生涯で経験する気候の極端な事象の数は、産業革命以前の気候条件下で経験しうる度合いをはるかに超える可能性があります。Nature誌に掲載された論文は、気候モデル等を用いて、産業革命以前の気候のもとで予想される曝露量の99.99パーセンタイルを超える、ありえないレベルの極端現象への累積生涯曝露を経験する人の数を予測しました。

分析の結果、現在の緩和政策のもと、世界気温が2100年までに産業革命以前の気温より2.7℃上昇する場合、熱波、農作物の不作、河川の洪水、干ばつ、山火事、熱帯低気圧といった極端現象に、生涯においてかつてないほどの曝露に直面する出生コホート(ある期間に出生した人の集団)の割合は、1960年から2020年の間に比べ、少なくとも2倍になると予測されました。1.5℃上昇の経路では、2020年に生まれた人の52%が、かつてないほどの生涯にわたる熱波曝露を経験すると予想される一方、 3.5℃上昇経路では、この割合は熱波で92%、農作物の不作で29%、河川洪水で14%に上昇します。とりわけ社会経済的脆弱性が高い人口集団では、生涯で前例のない熱波に晒される可能性が著しく高くなります。

論文著者らは、現在の若い世代への気候変動の負担を軽減するために、温室効果ガスの排出量を大幅かつ持続的に削減する必要を訴えました。


(参考文献)
Grant, L., Vanderkelen, I., Gudmundsson, L. et al. Global emergence of unprecedented lifetime exposure to climate extremes. Nature 641, 374–379 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08907-1


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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