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370. 過去50年間、気候変動は極端現象を大幅に上昇させているが、早期警戒システムのお陰で人的被害は小さくなる傾向に
370. 過去50年間、気候変動は極端現象を大幅に上昇させているが、早期警戒システムのお陰で人的被害は小さくなる傾向に
2021年8月31日、世界気象機関(WMO)は、1970-2019年の50年間にわたる気象・気候・水関連の極端現象による死亡者数と経済損失に関する包括的な報告書を公表しました。以下、プレスリリースより内容を紹介します。
報告書によると、過去50年間にわたり、干ばつ、嵐、洪水、極端な気温、といった極端気象が、毎日平均115人の死者と2億ドルの経済損失をもたらしてきたとされます。気候変動の影響だけでなく、極端気象の増加とそれらに関する報告も向上したことから、50年の間に、災害の数は5倍に増加しました。同時に、早期警戒システムと災害マネジメントのお陰で、犠牲者の数は3分の1に減少し、年代毎では1970-80年代には毎日平均で170人に達しましたが、1990年代までに90人、2010年代には40人でした。経済損失の規模で大きいのは嵐や洪水であり、経済損失は1970年代から2010年代までに7倍になりました。最大の経済損失をもたらした災害トップ10のうち3つはハリケーンのハーヴイ(Harvey: 970憶ドル)、マリア(Maria: 690憶ドル)、イルマ(Irma: 580憶ドル)で、2017年に起こっています。
WMO報告書は2019年までの記録ですが、やはり最近公表された2020年気候白書(the State of the Climate in 2020)によると 2020年も歴史に残る気象現象が起こりました。2020年、パンデミックによる経済活動の低迷にもかかわらず、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素を含む温室効果ガスは過去最高値を記録しました。これは近代の62年間だけでなく、80万年の氷床コア記録(ice core records*)を遡って最高値とされています。平均より高い頻度で熱帯サイクローンが発生し、1981-2010年平均の85個に対し、北・南半球で102個の熱帯嵐が起こりました。北大西洋ハリケーンは2005年の25個という記録を超え、中央アメリカで甚大な被害をもたらしたエタ(Eta)とイオタ(Iota)を含む30個のハリケーンが命名されました。太平洋では、スーパー台風がフィリピンに影響をあたえ、ソマリアでは史上最強度の熱帯嵐を経験しました。
ちなみに、2021年8月29日、アメリカのルイジアナを襲ったハリケーン・アイダ(Ida)は、16年前の2005年にニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナ(Katrina:1800人近い死者と1640憶ドルの経済損失)に匹敵する経済被害をもたらしかねないとされていますが、早期警戒システム等への投資によって人的被害を最小にとどめられるのではないかとしています。(その後アイダは北西部方向に移動し、ニューヨークに大きな被害を出したと伝えられています)
気候変動への対応には、緩和対策と同時に、被害を最小化するための適応策を可能にするための科学的情報がますます重要になっていきます。
*氷床コア(Wikipedia):氷河や氷床から取り出された氷の試料のことで、古気候や古環境の研究に用いられる。氷コア、雪氷コアとよばれることもある。氷床コアを用いることで、過去の季節変化や古気候・古環境、過去の気温や大気の成分などを推定・復元することができる。氷床コアはここ80万年の地球規模の気候変化の分析において重視されている。
(参考文献)
WMO. Weather-related disasters increase over past 50 years, causing more damage but fewer deaths. 31 August 2021. https://public.wmo.int/en/media/press-release/weather-related-disasters…;
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)