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1042. 過去40年間にわたり世界の一酸化二窒素排出は大幅に上昇

1042. 過去40年間にわたり世界の一酸化二窒素排出は大幅に上昇
6月11日、Global Carbon Projectは、世界の一酸化二窒素(亜酸化窒素・N2O)収支を発表しました。
1980年から2020年にわたる過去40年間、世界の一酸化二窒素排出は大幅に上昇し、その増加の主な原因として、人為的な排出が40%増加したことが指摘されました。農業由来の排出が最大の排出源とされました。
分析の対象となった18地域において、N2O排出の削減が観察されたのはヨーロッパ、ロシア、オーストラリア、日本および韓国だけでした。ヨーロッパはとくに大幅な削減を達成しましたが、その多くは化石燃料・産業由来の排出で、加えて農業由来の排出も減少しましたが、2000年代までに直接的な農業由来排出削減のトレンドは横ばいになっています。
中国や南アジアは1980-2020年期間に大幅なN2O増加を経験し、人為的な排出は中国で82%増加し、南アジアで92%増加、その最大要因として農地での窒素肥料利用や堆肥が指摘されています。
論文は一方において、推計手法の不確実性も指摘し、その要因の一つとして、アマゾン盆地・コンゴ盆地・東南アジアといった熱帯エコシステム、および肥料施用量・排出の多い中国・北インド・アメリカコーンベルトといった地域における土壌からのN2O排出推計にまつわる課題を指摘しました。
こうした不確実性を踏まえ、論文は、N2O排出の空間時間的分布を把握し不確実性を削減するために、陸地・海洋におけるN2Oフラックス(単位面積から単位時間に発生する量)のモニタリング・分析ネットワークの構築を提案しました。
これにより、気候変動に対するN2O排出の影響を抑制し、N2O排出削減のための政策に重要な情報を提供することが期待されます。
一酸化窒素排出による気候変動・環境問題悪化に対し、国際農研発の生物的硝化抑制(BNI)技術は、植物の力を利用し土壌の硝化を抑制し、窒素循環を改善しながら、作物の生産性を向上出来ます。また、国際農研はBNI国際コンソーシアムを通じ、世界のBNI研究を主導し、農地由来のN2O排出削減に大きく貢献するイノベーションを生み出しています。
生物的硝化抑制(BNI)技術の活用による低負荷型農業生産システムの開発【BNIシステム】
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proa/a3
(参考文献)
Hanqin Tian et al, Global nitrous oxide budget (1980–2020), Earth System Science Data (2024). DOI: 10.5194/essd-16-2543-2024, https://essd.copernicus.org/preprints/essd-2023-401/essd-2023-401.pdf
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)