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797. 過去10年間の温暖化に関する最新情報

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797. 過去10年間の温暖化に関する最新情報

6月9日、気象庁は、エルニーニョ現象が発生しているとみられると発表、今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)と予測しました。エルニーニョ現象は、ここ数年間ラニーニャ現象がもたらしてきた天候・気候パターンとは対照的なインパクトを及ぼし、世界の気温をさらに押し上げる可能性があります。
  
今年12月にドバイ開催予定の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、気候変動対策の一層の強化に向けた政策決定を行うため、科学的根拠・エビデンスが重要視されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今年3月、パリ協定に基づき温暖化を抑制するために必要な対策をまとめた第6次評価統合報告書を公表しています。一方、IPCCのレポートは5-10年間周期で公表されるため、最新のデータでないことが課題です。

この状況を鑑みて、Earth System Science Data誌で公表された論文は、IPCCの手法に基づき、気温・温室効果ガス排出トレンドに関する最新の情報を報告しました。論文は、2013-2022年の期間、人為的な温暖化がかつてない速さで進行、10年間平均で産業革命期比の1.14 [0.9 to 1.4] ℃、2022年には1.26 [1.0 to 1.6]℃を記録し、10年間で0.2℃の温暖化が進行したことを示しました。論文は、この期間の温暖化の原因として、二酸化炭素換算の温室効果ガス排出量が540億トンと史上最高値を記録したのに加え、冷却効果を持つエアロゾルの減少を挙げました。論文によると、この10年間、人為的な温暖化が史上最高レベルに達し、大きな噴火活動による冷却効果がなければ10年内に1.5℃に達する可能性も否定できない一方、温室効果ガス排出量はピークに達し減少傾向に転じる可能性もあります。論文は、2020年代の間に温室効果ガス排出削減を社会的に選択することで、人類による気候への人為的な影響を転換する必要性を強調しました。


2023-2027年の5年間の少なくとも1年に、産業革命期の平均気温を1.5℃超す可能性が高いという予測もある中、あらゆるセクターにまたがる温室効果ガス排出削減のためのシステム移行が求められます。

(参考文献)
Piers M. Forster et al, Indicators of Global Climate Change 2022: annual update of large-scale indicators of the state of the climate system and human influence, Earth System Science Data (2023). https://essd.copernicus.org/articles/15/2295/2023/

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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