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773. 2023年のエルニーニョ現象見通し

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773. 2023年のエルニーニョ現象見通し

5月3日、世界気象機関(WMO)は、今年後半にエルニーニョ現象の影響が増していく可能性についての見通しを発表しました。エルニーニョ現象は、ここ数年間ラニーニャ現象がもたらしてきた天候・気候パターンとは対照的なインパクトを及ぼし、世界の気温をさらに押し上げる可能性があります。

いつになくしつこく継続してきたラニーニャが3年目で終わりをむかえ、太平洋熱帯地域は現在、エルニーニョ現象でもラニーニャ現象でもない状態(ENSO[エルニーニョ・南方振動]-neutral state)にあります。 WMOは、2023年5-6月の間にこの平常時からエルニーニョ現象に移行する確率が60%、7-8月には70%、7-9月には80%まで高まると発表しました。

過去3年間ラニーニャ現象であったにもかかわらず、過去8年間は連続して高気温を記録していました。エルニーニョ現象が発展していることは、世界気温の高温記録を破る可能性が出てきているということを意味します。実際に、史上最高気温を記録した2016年は、非常に強いエルニーニョ現象と温室効果ガスによる人為的な温暖化という二重のショック(“double whammy”)が重なったためとされています。

ラニーニャ現象は通常は世界気温上昇にブレーキをかける効果があるとされ、対照的にエルニーニョ現象は高温や、地域によっては干ばつや大雨をもたらしてきました。過去の例では、南アメリカ南部、アメリカ南部、アフリカの角、中央アジアといった地域で、エルニーニョ現象のもとで降雨量の大幅な増加を経験、対照的に、オーストラリア、インドネシア、南アジアで干ばつをもたらしました。北半球の夏には、エルニーニョによる暖かい海水が太平洋中央・東部でハリケーンをもたらす一方、大西洋でのハリケーン形成を妨げる傾向にありました。他方、これまでエルニーニョ現象が似たような事象をもたらしたことはなく、一年の間のタイミングによってそのインパクトが変化しうることも知られています。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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