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784. 複合的な異常気象の同時発生による作物への影響

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784. 複合的な異常気象の同時発生による作物への影響

異常気象は世界中のあらゆる地域で観察されています。この異常気象が同時に発生した場合の作物収量への影響については未だ明らかにされていません。アールト大学のMatias Heino氏、Matti Kummu氏を中心とする国際チームは、地球規模の気象データおよび主要作物の収量データを用いて複合的な異常気象の同時発生による影響を推定し、Scientific Reportsに発表しました。

本研究では、1980年から2009年にかけての世界の気象データとトウモロコシ、コメ、ダイズ、小麦の収量のデータを用いて、高温かつ乾燥、および、低温・多雨の複合的な異常気象の影響を推定しました。その結果、極端な高温と干ばつが同時発生すると、調査したすべての作物の収量が世界的に減少することが明らかになりました。一方で、極端な寒冷・多雨の条件では、世界的な作物収量の減少は観察されたものの、その程度はより小さく、この組み合わせによる影響はより不確実で一貫性がないものであったと報告しています。

小麦の栽培農家が栽培期間中に猛暑や干ばつに見舞われる確率は、1980年から2009年の調査期間で6倍に増加し、農家は生育期に発生する酷暑や干ばつに対処しなければならなくなりました。また、小麦に比べて増加幅は小さいものの、トウモロコシ、米、大豆のリスクも2倍に増加していました。

研究者らは、これらの条件が作物の収量に与える影響についても調査しており、酷暑や干ばつによって小麦の収量は全体で約4%減少し、特にロシアや中国といった比較的涼しい地域ではそれ以上に減少しました。同様にトウモロコシの収量も約3%減少しており、北米、東ヨーロッパ、中国の地域ではより大きな損失が発生しました。

著者らの今回の研究により、気候変動の増大が世界の食糧生産に及ぼす潜在的な悪影響が浮き彫りになりました。

 

(参考文献)

Crop yields reduced by climate extremes, finds study
https://phys.org/news/2023-03-crop-yields-climate-extremes.html
Heino, M., Kinnunen, P., Anderson, W. et al. Increased probability of hot and dry weather extremes during the growing season threatens global crop yields. Sci Rep 13, 3583 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-29378-2


(文責:情報広報室 金森紀仁)


 

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