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187. 気候変動の不均衡なインパクト―熱帯乾燥地域における人間活動・環境連鎖と降雨に対する植生感度パターン

 

気候変動は世界における乾燥地域の面積と乾燥度の双方を増加させると予測されています。同時に、殆どの乾燥地域は、今後も急激な人口増がエコシステムに追加的な負荷をかけることが予測されている途上国に位置しています。したがって、乾燥地はとりわけ環境変化と大規模な環境劣化に対して脆弱です。しかし複雑な人間―環境の連鎖による植生変化の長期的な影響についてはよく理解されていません。

Nature Sustainability誌に公表された論文は、時系列的な衛星画像データを用い、熱帯乾燥地域における植生機能に大きな影響を及ぼす水のアベイラビリティに対して、植生の生産性が過去20年間どのような変化を遂げてきたかについて示しました。地域・国ごとに大きな違いはあるものの、全体として、熱帯乾燥エコシステムの三分の一が降雨に対する植生の感度に大きな変化がありました。分析によると、途上国においては降雨に対する植生再生が十分進んでおらず、豊かな先進国とは逆のトレンドが観察されました。このことは、将来、途上国の乾燥地域で食料問題がおき、気候難民発生の可能性を示唆します。地域別では、とりわけアジア・アフリカでは降雨に見合った植生再生がおこらない状況が顕著であり、オーストラリアや南米の乾燥地では逆の傾向が観察されました。研究は、途上国において負の効果をもたらす最大の要因が人口であるとつきとめました。負の影響を回避するためには、熱帯乾燥地域における植生と降雨の感度関係や変化をもたらす要因の理解を通じて緩和策を早急に講ずることが大切です。

国際農研では、途上国における熱帯乾燥地域における植生再生にも貢献しうる土壌保技術の開発を現地パートナーと共同で行ってきました。

参考文献

Christin Abel et al, The human–environment nexus and vegetation–rainfall sensitivity in tropical drylands, Nature Sustainability (2020). DOI: 10.1038/s41893-020-00597-z

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)