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704. 低・中所得国における食料価格高騰と子どもの低栄養

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704. 低・中所得国における食料価格高騰と子どもの低栄養

世界中で食料価格が高騰しています。報道からだけでなく、日々の生活の中で実際に肌で感じている方も多いでしょう。

本日は昨年12月に国際食料政策研究所(IFPRI)から公表されたディスカッションペーパーをご紹介します。その中で、21世紀の特徴として、世界の食料価格の変動が激しくなった(2007-8年、2010-11年、そして2021-22年の価格高騰)と述べられています。

これまで、食料価格の高騰が子どもの低栄養にどのようなリスクをもたらすのかはよくわかっていませんでした。そこで本研究では、44 の低・中所得国の 127 万人の就学前の子供たちの消耗症(身長に対して体重が軽すぎる状態。急性的な栄養不良)と発育阻害(年齢に対して身長が低すぎる状態。慢性的な栄養不良)に対する食料価格高騰の潜在的な影響を分析しました。

平均して、食品の実質価格が 5% 上昇すると、消耗症のリスクが 9% 増加し、深刻な発育阻害のリスクが 14% 増加します。これらのリスクは、出生前からの影響を受けていることが示唆されるような乳児にも、食料価格高騰の結果としての食事の質の低下を経験するもう少し年上の子供にも当てはまります。男の子や、農村部の貧しく土地を持たない家の子どもは、より深刻な影響を受けます。また妊娠中および生後 12か月の間におきた食料価格高騰も、2 歳から 5 歳の子供の発育阻害のリスクを高めます。

食料価格の高騰は、このように小さな子どもたちの栄養状態にも影響するのです。食料価格高騰を防ぎ、脆弱な子どもとその母親への影響を軽減するための介入が合理的であることをこのエビデンスが示しています。

(参考文献)
Headey, Derek D.; Ruel, Marie T. 2022. Food inflation and child undernutrition in low and middle income countries. IFPRI Discussion Paper 2146. Washington, DC: International Food Policy Research Institute (IFPRI). https://doi.org/10.2499/p15738coll2.136457

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)
 

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