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966. 所得が上がると栄養改善、では食料価格が下がると?

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966. 所得が上がると栄養改善、では食料価格が下がると?

 

本日は、Nature foodに掲載された論文(McCullough et al. 2024)をご紹介します。

アフリカでは、食料価格が高く所得は低いため、すべての人が健康的な食事を手に入れることができるわけではありません。しかし、価格や所得が変化した場合にアフリカの消費者が需要のパターンをどう変化させるのかは、まだ十分にわかっていません。

本論文では、サブサハラアフリカ5 か国で国を代表する世帯パネル調査データを用いて消費者の嗜好をモデル化し、食料価格、総支出(注:所得のようなものと考えて良い)、その他の需要決定要因の変化に栄養素の摂取がどのように反応するかを分析しました。

結果、貧しい消費者の総支出の増加は、彼らの栄養素摂取の適切さに、これまで言われていたよりも強い正の相関があることがわかりました。これは貧困削減が食事の質を向上させるという考えを裏付けるものです。

また、主食の価格は、貧しい消費者の食事が1つの主食にほぼ依存している国(マラウイ、ニジェール、タンザニアなど)で特に、食事の適切さに影響することもわかりました。複数の主食が存在する国(ウガンダ、ナイジェリアなど)では、単一の主食の価格が貧しい消費者の食事の適切さを決定する強力な要因となることはありません。

健康的な食事は概して高価であり、その相対的な価格の高さが食事の質に対する障壁とされてきましたが、健康的な食料の価格を下げるだけでは格差は埋められません。むしろ、主食の価格が下がり貧困が減少することが、食事の質の改善につながる傾向が見られました。

 

(参考文献)
McCullough, E.B., Lu, M., Nouve, Y. et al (2024). Nutrient adequacy for poor households in Africa would improve with higher income but not necessarily with lower food prices. Nat Food 5, 171–181. https://doi.org/10.1038/s43016-024-00927-w

 

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

 

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