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229. フードシステムを通じた栄養改善についての政策提言

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ロンドン大学シティ校食料政策センターが昨年12月に公開したポリシーブリーフでは、「フードシステムをすべての人がより健康的な食生活を送る方向に向けるための42の政策と行動」が提言されています。

ロンドン大学シティ校の食料政策センター、栄養改善のためのグローバルアライアンス(GAIN)、ジョンズホプキンス大学は、2020年初頭から、フードシステムを栄養改善に貢献できる方向に向かわせるための勧告をまとめ始めました。フードシステムを通じた活動が、栄養改善に貢献できる可能性を秘めているからです。

今回まとめられたアクションでは健康的な食事に焦点を当てていますが、次の段階では、環境の持続可能性を向上させるための取り組みとどのように相乗効果を発揮し、サポートできるかを評価していくことになります。

どのようなアクションが有用で、それによってどのような影響が見込めるか(たとえば育種研究では栄養価の高い作物の優先度を上げると、全ての人にとって微量栄養素の入手可能性が高まる)をまとめたリストは42項目にわたります。内訳は、農業(1-7)、国際貿易 (8)、研究・加工・技術(9-15)、サプライチェーンのインフラ(16-21)、財務(22-25)、公的機関(26-27)、ビジネスインセンティブ(28-32)、規制と法(33-37)、教育・啓発活動(38-41)、国内ガイドライン(42)です。

農業に関する提言(1-7)では、1:農民による栄養ある作物栽培・販売支援のための普及システム・インフラ・教育の強化、2:栄養ある作物栽培からの所得向上を促進する農業開発プログラムの改編、3:女性を対象とした資産アクセス・生産性向上等の支援、4:低所得世帯に対する家畜飼育改善の支援、などが謳われています。研究・加工・技術に関する中でも研究に関する提言(9-10)では、育種における栄養価改善重視や栄養強化作物開発を訴えています。

国際農研は、「スーパーフード」として注目を浴びているキヌアの研究を日本・ボリビアのパートナーとともに実施しています。キヌアは、近年、グルテンフリー、低いGI値( Glycemic Index:食後血糖値の上昇を示す指標)、アミノ酸・繊維・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル類の絶妙な配合などの栄養価が高く評価されています。同時に、キヌアは不毛の土地とされるウユニ塩湖のような過酷な環境で生育しており、そのメカニズム解明にも注目が集まっています。国際農研は、農民の所得向上を目的としたキヌアの品種改良・高付加価値化への道筋をつけるのみならず、厳しい環境・気象条件に適応する作物のメカニズムを明らかにすることで、気候変動に対する育種戦略への知見を得ることを目指しています。


参考文献

Hawkes, C., Walton, S., Haddad, L., Fanzo, J. (2020) 42 policies and actions to orient food systems towards healthier diets for all. London: Centre for Food Policy, City, University of London.   https://www.gainhealth.org/sites/default/files/event/publication-42-pol…
accessed on Feb 3, 2021.

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)
 

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