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402. 野菜と果物の栄養改善への貢献とフードシステムにおける課題

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402. 野菜と果物の栄養改善への貢献とフードシステムにおける課題

今年は国連の定める国際果実野菜年です。今回は、オランダのワーヘニンゲン大学のウェブサイト掲載記事から、野菜・果物にまつわる調査結果を紹介します。

アジアとアフリカの何百万人もの人々は、食料不足ではなく、健康的な食料の不足に苦しんでいます。野菜や果物は、栄養価は高いにしろ高価であり、容易に入手できません。長い間、農業や開発の政策では穀類に注目しカロリーを充たすことに重点が置かれていました。野菜をとりあげるにしろタマネギとトマトだけで、もっと健康的な葉物野菜は注目されていませんでした。ワーヘニンゲン大学らは、低中所得国のフードシステムにおける野菜と果物の消費状況を調査し、この考え方を変える必要があると述べています。

調査結果から、主に3つの結論が示されています。第一に、対象地域での野菜や果物の消費量は低すぎて栄養不良のリスクを防ぐことができません。この問題はすべての社会層に影響を及ぼしています。第二に、野菜と果物の価格が高すぎて買うことができません。そして第三に、女性が野菜や果物を生産、販売、加工してより多くのお金を稼ぐことを妨げるたくさんの障害があります。これらの障害はもっと大きな課題―農業において女性が直面する不平等―の一部です。

調査対象の7か国では、野菜と果物の消費量が非常に低いことがわかりました。これは、フードシステムが人々の栄養ニーズではなく、市場と生産に焦点を当てているためです。生産者と消費者をつなぐことのできる小さな店の経営者は往々にして見過ごされ、大規模な農業開発プログラムに含まれませんでした。

野菜や果物は、食料に関するプログラムに無かったわけではありませんが、タマネギとトマトに偏っています。これらの野菜は多くの料理に登場しますが、トマトは加工後の栄養素が比較的少なくなります。一方、葉物野菜は栄養素が豊富ですが過小評価されがちです。葉物野菜は、品種改良がなされておらず、取引のチェーンも発達せず、日持ちもしないことが理由でしょう。

タマネギとトマトから葉物野菜への移行は、女性が生産・売買においてより重要な役割を与えられた場合にのみ可能です。遠方から長いサプライチェーンを経由して来るものは男性の仕事です。男性はトラックに乗り、長期間家を離れる余裕があります。女性にとっては、家庭での責任と組み合わせるのは難しいことが多々あります。残念ながら、多くの農業政策と援助プログラムはジェンダーを考慮しておらず、男性が関わるプロジェクト、つまり長いフードサプライチェーンと商品作物に投資が向けられがちです。

女性が栽培する地元の葉野菜への投資は有益です。しかし、女性はインフォーマル経済で、資本、種子、トレーニングなど、必要なものにアクセスできないことがあります。インフォーマル経済での健康的な食品の生産・売買に目を向けませんか。栄養不良を防ぐために、これまでとは考えを変える必要があるとしています。


参考文献

Wageningen University & Research. Shift in thinking required to prevent malnutrition worldwide, Economic research news. https://www.wur.nl/en/Research-Results/Research-Institutes/Economic-Res… Accessed on Oct 18, 2021.

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

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