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124: Farm to Fork(農場から食卓まで): フードシステムを通じた気候変動対策強化

 

2020年9月1日、国連環境計画(UNEP)・世界自然保護基金(WWF)・非営利組織であるEAT・Climate Focusは、報告書「フードシステムのため各国による自主的な取り組み*を強化せよ Enhancing Nationally Determined Contributions for Food Systems」を公表し、温室効果ガス排出削減機会を逃さないよう、各国が採択すべき対策について提案しました。

グローバル・フードシステムは、生物多様性の喪失・土地利用の転換・水資源の枯渇・陸水域生態系の汚染の主要な要因となっています。世界の温室効果ガス排出の24%は、農業・林業及びその他土地利用(AFOLU)が占めます。さらに、生産だけでなく輸送・加工・消費・フードロスも含めたフードシステムに関わる活動では、人為的な温室効果ガス排出の21-37%を占めると推計されています。今日の食料生産・消費慣行に変化がなければ、1.5℃目標の排出上限に到達し、2050年までに「プラネタリー・バウンダリー」で示された領域の殆どで限界を超えてしまうでしょう。食生活および食品廃棄物・フードロスは、現在の気候変動交渉の場で殆ど話題にされませんが、これらを議論に含めることで、フードシステムからの気候変動緩和および適応への貢献を25%近く向上できることが期待されます。

2015年に採択された気候変動に関する国際的枠組みであるパリ協定のもとでは、5年ごとに各国が温室効果ガス排出削減と気候変動適応のための自主的な取り組み (Nationally Determined Contributions: NDCs)を見直すことになっており、2021年がそのタイミングです。したがって2020年の今、政策関係者にとって、「フードシステム・アプローチ」の観点から温室効果ガス排出削減できる解決法を提示し、野心的な目標を設定するチャンスです。

食料の生産・加工・流通・調理・消費に関わる全ての要素や活動を包括するフードシステムは、世界の温室効果ガス排出の最大37%を占めるため、排出削減の大きなカギを握っています。土地利用の変化や食料生産レベルでの緩和策により、二酸化炭素換算で毎年7.2Gt、食品廃棄物・フードロスの削減と持続的で健康的な食生活へのシフトにより毎年1.8Gtの排出削減が世界で見込まれ、2050年の1.5℃目標達成に必要な緩和規模の20%に貢献することが期待されます。

各国が対策を検討する上で、各国の農業生産システム・食料嗜好・都市化・インフラなどに応じて、食料・農業セクターの各段階からの排出水準が大きく異なることに留意すべきです。また、各国の事情と優先事項も異なります。例えば、食料消費や食品廃棄からの排出の大部分を占めるG20のような先進国では、こうした分野でより野心的な目標を設定すべきです。対照的に、食料安全保障に課題を抱える途上国では、持続的で強靭なフードシステム構築への支援が必要です。さらに、フードシステムは気候変動適応の観点からも重要です。現在のフードシステムは、異常気象の頻発化による影響を受けており、途上国で自給自足的な生活を送る農民は、気候変動によりさらなる貧困に陥るリスクに直面しています。クライメートスマート・保全農業やフードシステムの多様化へのシフト、持続的で健康な食生活への転換は、排出削減に貢献するだけでなくフードシステムの強靭化に貢献します。

報告書は、次の対応策について提案しました。

 

生産レベル

  • 土地利用変化・自然生態系の転換の削減 reduced land-use change and conversion of natural habitats
  • 効率的な栽培管理(土壌炭素・保水力改善)efficient cropland management (e.g. crop rotation and cover crop)
  • 水田からの排出削減 reduced emissions from rice paddies
  • アグロフォレストリー・システム agroforestry systems
  • 化学肥料の生産・利用効率の改善 improved synthetic fertilizer production and use
  • 節減・不耕起栽培 reduced or zero tillage
  • 多様化作物システム diversified crop systems
  • 家畜生産(消化管内発酵と堆肥)からの排出削減 reduce emissions from livestock (enteric fermentation and manure)
  • 牧草地管理の改善 (improved management of pasture and grazing land)

 

加工・貯蔵・輸送

  • 食品処理・貯蔵 (improved handling and storage of food)
  • 食品廃棄物の削減 (reduced food waste)

 

消費・食生活

  • 消費者・小売業者による食品廃棄物の削減 (reduce food waste by consumers and retailers)
  • 森林破壊・土地利用変化にかかわる輸出商品作物(パーム油・大豆・牛肉・木材製品等)に代わる地域食品 (relevant for foods with high-imported emissions)
  • 排出量の高い食品消費の削減 (reduce consumption of emissions-intensive food)
  • 健康で持続的な食品消費へのシフト (increase consumption of healthy and sustainable food)

 

 

*2015年パリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で合意されたパリ協定において、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑えるため、途上国を含む全ての参加国に求められる自主的な取り組み(Nationally Determined Contributions: NDCs)を促すアプローチ

 

参考文献

UN News, From farm to fork: How food systems can power climate action. September 1, 2020. https://news.un.org/en/story/2020/09/1071412

Ingrid Schulte, et al. 2020. ENHANCING NDCS FOR FOOD SYSTEMS ECOMMENDATIONS FOR DECISION-MAKERS. WWF Germany & WWF Food Practice https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/33597/ndcf.pdf?se…

https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/33594/FSS.pdf?seq…

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)