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959. 低・中所得国での栄養不良の二重負荷に関するシステマティックレビュー

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959. 低・中所得国での栄養不良の二重負荷に関するシステマティックレビュー

 

栄養不良には、栄養不足(エネルギー摂取量不足。慢性的なものが飢餓)、過栄養(エネルギー摂取量が過剰な状態。過体重や肥満)や食事に関連した非感染性疾患(NCDs)、微量栄養素不足(ビタミン・ミネラルの不足)などのさまざまな問題が含まれます。複数の問題を同時に抱えていることもあり、二重負荷・三重負荷などと呼びます。

低所得国・中所得国では栄養転換(伝統的な食事からのシフト)が急速に起こっている国も少なくありません。するとそれまでは低栄養に注目していたため、過栄養の問題が共存してきたことを見逃しがちになります。ここで言う栄養不良の二重負荷(double burden of malnutrition: DBM)は、栄養不足と過栄養 (過体重および肥満) または食事に関連した非伝染性疾患が共存することを特徴とします。

本日は、The Lancet Global Healthに掲載されたシステマティックレビュー論文(Escher et al. 2024)を、それに対する解説(Sahiledengle & Mwanri, 2024)も参照しながらご紹介します。

低所得国・中所得国(LMICs) の 3 分の 1 以上が国レベルでDBM の影響を受けていると考えられます。DBM に関するランセットのシリーズでは、栄養の過剰と不足はもはや別々に考えることができないという、新しい現実を浮き彫りにしています。なおWHOはDBMに取り組む効率的な方法としてダブルデューティアクション(double-duty action:栄養過剰と栄養不足に同時に対処する栄養介入を指す)を提唱していますが、効果に関するエビデンスがまだ不足しています。

そんななか、本レビュー論文では、LMICsにおける栄養不足と栄養過剰に対する介入の効果を要約しています。2000 年- 2023 年のデータベースと文献から、栄養に特化した (nutrition-specific)20 の介入(母子保健・学校ベース)と、栄養に配慮した(nutrition-sensitive) 6 つの介入(条件付き現金給付等)を評価した 26 の研究を特定し、DBMに対して 有益、潜在的に有益、中立、潜在的に有害、有害の5つに分類しました。

結果、DBM有益とされた研究も多かったのですが、食品や栄養補助食品を提供する母子介入 では8 件中 7 件で過体重への悪影響の可能性が示されました。条件付き現金給付に関する2件の研究では子供に対して有益でも、1件では母親の過体重に対する潜在的に有害な影響が示されました。家族計画や教育改革に関する研究では、肥満に対する長期的な悪影響の可能性も明らかになりました。

対象となった研究は、研究のデザイン、対象集団、結果の評価、介入期間、研究の質の点で非常に多様でしたが、今後ますます多様な研究が必要でしょう。そして栄養不足解消を目的とした介入は肥満に予期せぬ悪影響を与える可能性があることも心に留め、栄養不足と栄養過剰の結果の両方を報告するようにするべきでしょう。

 

(参考文献)

Nora A Escher, Giovanna C Andrade, Suparna Ghosh-Jerath, Christopher Millett, Paraskevi Seferidi. The effect of nutrition-specific and nutrition-sensitive interventions on the double burden of malnutrition in low-income and middle-income countries: a systematic review. The Lancet Global Health (2024). https://doi.org/10.1016/S2214-109X(23)00562-4

Biniyam Sahiledengle, Lillian Mwanri. Unveiling the crisis of the double burden of malnutrition. The Lancet Global Health (2024). https://doi.org/10.1016/S2214-109X(24)00001-9

 

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)


 

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