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39. 2020年世界栄養報告:公正への活動で栄養不良に終止符を

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2020年世界栄養報告(2020 Global Nutrition Report)が発行されました。世界栄養報告とは、2013年の栄養サミット(N4G)をきっかけに生まれた、各ステークホルダーのコミットメントを追跡評価するために作られた報告書です。データ主導による独立した評価を行っており、栄養に関する不足しがちなデータを補完し、世界の栄養にまつわる現状を示し、栄養改善のための行動を促す重要な役割を担っています。

今年の報告書も、これまでの報告書と同様に、世界、地域、国レベルでの栄養状態を提示する最も包括的な報告書となっており、国際栄養目標とその目標到達のためのコミットメントに対する進捗状況を追跡しています。栄養不良に関して入手できる限りのデータに基づいた掘り下げた分析と専門家の意見をまとめ、栄養の格差を縮小するために必要な行動を提示しています。また、コミュニケーションツールキットも提供されています。

現在、世界の多くの国は栄養不足と栄養過多の二重負荷を抱えています。世界で9人に1人が栄養不足であり、3人に1人が過体重です。すべての人々が、健康的で入手可能な食事をとり質の高い栄養ケアを受ける権利がありますが、実際にはアクセスや価格などの問題によって必ずしも享受できていません。貧相な食事やそれによって生じる栄養不良は、単なる個人の選択の問題ではないのです。

今年の報告書の副題は「公正への活動で栄養不良に終止符を(action on equity to end malnutrition)」であり、特に公正という点に注目して、あらゆる形態の栄養不良を終わらせる上での不公正の影響を明らかにしています。世界や国レベルでのパターン分析では、国内や集団内の格差が見えず、最も影響を受ける弱い人たちの存在を隠してしまうことを示しました。そして、食料や健康のシステムを公平で強靭性をもった持続可能なものにしていくこと、(特に最も影響を受けやすい人々の)栄養に投資すること、国際的な協力を行うこと、この機会に栄養に関するコミットメントを更新・拡張し、説明責任を強化することなどを求めました。

報告書自体は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの前に編集されていますが、序文でパンデミックについても触れています。新型コロナウイルスは食料や健康のシステムの脆弱性を露呈しました。その影響は不均衡であり、既に脆弱な人々により大きな影響を与えています。栄養不良は免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくなります。さらに社会経済的な影響による栄養不良が引き起こされる可能性もあります。栄養は、緊急時また長期的な対応のなかで、世界的なストレスに耐えられる強靭性を持つために非常に重要な要素なのです。世界の食料・健康システムが脅威にさらされる中、あらゆる形態の栄養不良に対する取り組みを強化するよう、政府、企業、市民社会に呼びかけています。

参考文献

Development Initiatives. (2020). 2020 Global Nutrition Report: Action on equity to end malnutrition. Bristol, UK. https://globalnutritionreport.org/ Accessed on May 15, 2020.

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)

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