インドシナ半島の発酵型米麺のタンパク質分解と特徴的なテクスチャの関連性
インドシナ半島で生産、消費される発酵型米麺では、原料米のコメ貯蔵タンパク質の一部が選択的に分解を受けることで、伸展性に優れたテクスチャとなる。発酵させない場合、麺のゲルの破断点となる構造がタンパク質により形成されるため、伸展性に乏しい。
背景・ねらい
インドシナ半島では、カノムチーン(タイ)、カオプン(ラオス)、ブン(ベトナム)等の押出式の発酵型米麺が伝統的に生産、消費されている。発酵型米麺は通常の米麺とは異なり、発酵による特徴的な風味に加え、伸展性に優れた特徴的なテクスチャを有している。伝統食品である発酵型米麺が伸展性に優れる原因を解明するため、発酵過程におけるタンパク質の変化と、麺における局在がテクスチャに与える影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 製造工程(図1)中のタンパク質含量は、好気的条件で発酵させる初期の3日間にタンパク質の多くが分解され、以降は減少しない(図2)。
- 発酵米粉及び発酵していない水挽米粉で米麺を調整し、米麺内のタンパク質の局在を観察すると、発酵型米麺ではタンパク質の小顆粒が均一に存在するが、水挽米粉のみで調整した米麺では、均一な小顆粒に加え、別のタンパク質顆粒が構造を形成し、不均一となる。(図3)
- 発酵により分解されるタンパク質は、易消化性タンパク質(プロテインボディII)である。一方、難消化性タンパク質(プロテインボディI)は分解されず、均一なタンパク質の小顆粒として、米麺に残る。発酵していない水挽米粉から調製した米麺では、タンパク質による不均一な構造が形成され、破断点となるため、伸展性が低い。発酵し、破断点となり得るタンパク質を除くことで、米麺の伸展性は40%向上し、麺が切れにくくなる。
- 発酵型米麺における発酵工程は易消化性タンパク質を分解、除去することで、米麺の均一な構造を確保し、伸展性を向上させる。
成果の活用面・留意点
- 発酵米粉は、発酵型米麺への加工用途としてのみ生産されているが、食品中間素材として米粉の代替としての使用が可能である。また、発酵により、易消化性タンパク質が分解されることから、低タンパク素材としても活用できる。
- 発酵により、コメアレルギーに関わるタンパク質も分解されるため、アレルギー対応食品への利用も想定できるが、適用前にアレルゲン性の試験を実施することが必要である。
具体的データ
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図1 タイの発酵型米麺 カノムチーンの製造工程
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図2 発酵過程とタンパク質含量
発酵初期(1次発酵中;最初の3日間)にタンパク質含量の大幅な低下が見られる。 -
図3 米麺中のタンパク質の局在
発酵させない場合、赤破線で示したタンパク質の構造が見られるが、発酵麺では見られない。
- 所属
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国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » フードバリューチェーン
- 研究期間
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2016年度(2016~2020年度)
- 研究担当者
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吉橋 忠 ( 生物資源・利用領域 )
サマリー プラジョンウェート ( カセサート大学食品研究所 )
ビパ スロジャナメタクン ( カセサート大学食品研究所 )
ナラポーン ポンカイウォン ( カセサート大学食品研究所 )
Panthavee Wanchai ( カセサート大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Prajongwate S et al. (2017) Japan Agricultural Research Quarterly, 51(4), p. 309-318
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