好アルカリ好熱嫌気性セルロース分解菌の発見
アルカリ下でセルロース分解能を有する新しい好アルカリ好熱嫌気性細菌を発見した。本菌は国際原核生物分類命名委員会より新属、新種と認定された。本菌はアルカリ環境下でセルロースおよびヘミセルロース分解能を有する。
背景・ねらい
バイオマス前処理技術は、効率的酵素分解を行うために必須である。特に水酸化ナトリウム等を用いたアルカリ前処理は、植物バイオマスのリグニン、ヘミセルロース構造を破壊し可溶化させ、さらにセルロースの結晶構造を弛緩させる有効な処理法の一つである。しかしこれまで知られているカビ、細菌からの糖化酵素はアルカリ下では活性を十分に得ることが出来ないため、アルカリ前処理後、バイオマスを中和、水洗浄を十分行うことで、アルカリを除去する必要があった。本研究ではアルカリ環境下でも糖化能力を有する微生物を探索することで、洗浄工程の低減に繋がる環境負荷の少ない糖化プロセスの提案を目指した。
成果の内容・特徴
- 結晶セルロースを基質としてアルカリ(pH10.0)に調整した嫌気性培地を用い、タイ国内のココナッツ農園汽水域土壌から好アルカリ好熱嫌気性セルロース分解細菌の分離に初めて成功した。
- 本菌は至適pH 9.5、至適生育温度55°Cを持つ好アルカリ好熱嫌気性セルラーゼ生産細菌である(図1、表1)。
- 本菌はアルカリ環境下でのセルロースおよびヘミセルロースを分解することができる(表1)。
- 国際原核生物分類命名委員会より、新属、新種と認定を受けCellulosibacter alkalithermophilusと命名、登録された。
- 基準菌株A6は、タイ科学技術省科学技術研究所(TISTR)カルチャーコレクションに 1915Tとして寄託された。
成果の活用面・留意点
- 本菌は初の好アルカリ好熱嫌気性セルロース分解菌であるので、学術的価値が高い。
- 結晶度の高い天然セルロースはアルカリ下で弛緩するので、本菌を使うことで一層の高効率糖化が期待できる。
- 本菌の使用により洗浄工程を軽減する環境低負荷のアルカリ糖化プロセスを提案することができる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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研究A
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » アジアバイオマス
- 研究期間
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2012年度(2011~2016年度)
- 研究担当者
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小杉 昭彦 ( 生物資源・利用領域 )
Watthanalamloet A. ( キングモンクット工科大学ラカバン )
Tachaapaikoon Chakrit ( キングモンクット工科大学ラカバン )
ORCID ID0000-0001-9795-2558Ratanakhanokchai Khanok ( キングモンクット工科大学ラカバン )
- ほか
- 発表論文等
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A.Watthanalamloet et-al., International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (IJSEM) (2012), 62, 2330-2335 http://ijs.sgmjournals.org/content/62/Pt_10/2330.long
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