国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

氾濫低湿地で高位安定収量を示すイネ品種がある

要約

白ボルタ川上流域(ガーナ)の氾濫低湿地における天水直播水稲の収量は、河川からの距離で大きく異なり、かつ年次間変動も大きい。このような環境下でAmankwatia、Bodia、Sakai(いずれもガーナ在来品種)、IRBL9-W[RL] (日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統)は安定して相対的に高収量を示す。

背景・ねらい

近年、西アフリカ諸国ではコメの消費量が急伸しており、コメ増産は焦眉の課題である。その解決の方途のひとつに大型河川周辺の未利用氾濫低湿地を活用した水稲生産がある。しかし、灌漑水田の単収がヘクタールあたり4トンであるのに対し天水低湿地の単収は1トンと低く(Rodenburg and Demont 2007)、適性品種の導入よる収量の向上が期待される。本研究は、氾濫低湿地環境に適応したイネ品種を探索する。

成果の内容・特徴

  1. 氾濫低湿地の環境は河川からの距離によって大きく異なる。本研究の成果は、氾濫程度の異なる4地点(F1~F4)、3年間(2012〜2014)にわたる栽培試験により得たものである(図1)。
  2. 天水直播水稲の収量反応で見ると、年次間変動も大きい。その収量に関する品種と環境の相互作用の傾向は主成分分析により、環境群はE1〜E3に、品種群はG1〜4にグループ化できる(図1)。
  3. 品種群G-2は環境群E-3で収量が高かったが、特定環境でのみ高収量であっても、年次によって環境が大きく異なる氾濫低湿地においては、適性品種とは言えない(図1)。
  4. 品種群G-3は、収量水準が中程度であり、環境の変異に対し比較的安定している(図1)。
  5. 品種群G-4は環境群E-1で収量が高く、他の環境でも一貫して相対的に多収を示すことから氾濫低湿地における適性品種といえる(図1)。
  6. 個別品種でみると氾濫低湿地の適性品種はAMMI (additive main effect and multiplicative interaction) 分析図で中心近く(環境に対して安定)かつ高収量の条件を満たす品種でAmankwatia、Bodia、Sakai(ガーナにおける在来品種)、IRBL9-W[RL](日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統https://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/pdf/2011-10.pdf)、がある(図2)。IR42は中心から離れており安定性が低い。

成果の活用面・留意点

  1. 品種群G-1は早生品種であるが、本研究環境では早生品種による生育後期の干ばつリスク回避は有効でないことが示されており、この知見は今後の当地における育種戦略に活用できる。
  2. 本成果は、サブサハラアフリカのコメ生産を10年間で倍増(1,400万トンから2,800万トン)することを目標とする「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)による栽培環境分類の「天水低湿地」の収量増に貢献する。
  3. 本成果は、氾濫低湿地における天水直播水稲栽培の可能性を品種の面から裏付ける。なお、適性品種と他品種の違いの解明にはさらなる研究が必要である。

具体的データ

  1. 図1 環境群に対する品種群の平均収量
    図1 環境群に対する品種群の平均収量
    (左)G-はクラスター分析による品種群を、E-は環境群を示す。(右)試験地と河川との位置関係、及び標高を示す。F4は約4年に1度の確率で冠水。
  2. 図2 AMMI分析による各品種の環境適応特性
    図2 AMMI分析による各品種の環境適応特性
    矢印で示される環境に対する各品種の適合度を示す。図の中心に近い品種は収量が特定環境に依存しない(安定)。印の品種は中心近くでかつ収量も高い。
所属

国際農研生産環境・畜産領域

分類

研究B

国名
  • ガーナ
  • プログラム名

    食料安定生産

    予算区分

    交付金アフリカ稲作振興

    研究期間

    2015年度(2011-2015年度)

    研究担当者
  • 小田 正人 (生産環境・畜産領域)
  • 辻本 泰弘 (生産環境・畜産領域)
  • 圭佑 (京都大学)
  • 松嶋 賢一 (東京農業大学)
  • Inusah Baba (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • Dogbe Wilson (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • 坂上 潤一 (鹿児島大学)
  • 発表論文等

    Katsura et al. (2016) Eur. J. Agron., No.73, 152-159 https://doi.org/10.1016/j.eja.2015.11.014

    日本語PDF
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