カザフスタン産マメ科牧草エスパルツェトの種子は、地域的変異があり、強いアレロパシーを示す
カザフスタン産エスパルツェト(Onobrychis spp.)は1個の果皮の中に1個の種子を有し、その形態には地域的変異がある。果皮付種子の発芽は、果皮を除去した裸種子よりも遅れる傾向がある。サンドイッチ法によりアレロパシーを検定すると、果皮を除去した種子が最も強い。
背景・ねらい
中央アジアには広大なステップおよび山岳部草原が拡がり、旧ソ連邦時代の計画経済社会においては牧畜が行われていた。しかし、ソ連邦が崩壊し共和国が独立してから、社会経済的な影響も加わり、ステップを中心とした草地の荒廃が進んでいる。この荒廃を抑えるためには、在来のマメ科牧草エスパルツェトの導入も重要な技術であり、その際、雑草コントロールの観点からアレロパシーが重要な特徴である。そこで、種子の形態、発芽特性,並びにアレロパシーの強さを明らかにし、本種を定着させるための基礎的知見を得る。
成果の内容・特徴
- カザフスタン国内から採種したエスパルツェトは、1個の果皮の中に1個の種子を有するが、果皮付の種子の千粒重は19.7~24.1g、果皮を除去した種子のそれは14.8~16.3g、その比は0.65~0.75であり、種子の形態は地域によって異なる(表1)。
- エスパルツェトの種子の初期発芽率は、果皮付よりも果皮を除去したほうが良い(図1)。
- 種子からのアレロパシーの強さをサンドイッチ法で検定すると、果皮を除去した種子の活性が最も強い(表2)。
成果の活用面・留意点
- 中央アジアの荒廃したステップ草地へのエスパルツェトの導入・定着時の技術的なデータとして幅広く活用できる。
- エスパルツェトはアレロパシーの強い植物群に分類されるが、実際の草地における発芽の特徴およびアレロパシーは今後の検討が必要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 畜産草地部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際農業[中央アジア]
- 研究課題
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中央アジアにおける持続的草地管理技術の開発
- 研究期間
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平成12年度(8~11~12年度)
- 研究担当者
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佐藤 健次 ( 畜産草地部 )
藤井 義晴 ( 農業環境技術研究所 )
安藤 康雄 ( 畜産草地部 )
URAZALIEV Edik ( カザフスタン農業研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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佐藤健次, 藤井義晴 (2000): エスパルツェトの発芽特性及びアレロパシー. 雑草研究, 45(別), 94-95.
- 日本語PDF
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2000_19_A3_ja.pdf548.24 KB